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ソドム・パラノイア  作者: Y
HELL HATE HARDCORE
272/301

249:再生テスト

 私にとってはあたりまえでも、リリール達にとってはあたりまえじゃないことは、どうやらたくさんあるらしい。いじめとして行われるほとんどが、そう。


「再生テストは遊びじゃないわ、ソドムを離しなさい!」


 再生テスト。私達が年一回受ける、どのくらい早く傷が治るかを計るための試験。でも、今やられてることは違う。いじめとしての、再生テストごっこだ。今日まで何度もやられてきた、おなじみのごっこ遊び。リリールの目にはどう映っているのだろう。


「ソドムが受け入れてるのに横から文句を言うなんて、だめな班長だにゃあ!」


 私はもう何回もカッターで肌を切られている。スカートをまくられ、丸見えになった太腿の。それを見ているのはクラスのみんな。そして、見せられているのは六七班の三人。


「もう休憩時間が終わるにゃ。おい、ベストリーカとカリアーカ! 床についたソドムの血を拭いとけにゃ」


 ぱっくり開いた傷が、うにうにと動き塞がっていく。はぁ、痛いなぁ……。でも、じっとしてるのが一番楽なんだよね……。


「リリール、おまえは拭かなくていいにゃ、おまえがソドムにしてやれることなんて、なーんにもないにゃ」


 今の一言、重いな。


「だめ班長はおしおきだにゃ! ニカがばーっちり酷い目に合わせてやるから楽しみにしておけにゃ!」


 床を拭いた雑巾を洗いに行ったベストリーカとカリアーカは、教室に戻ってこなかった。




 そして宣言通り、リリールは次の休憩時間に酷い目に合わされた。でもそれも――――私は経験済みのことだった。


「リリール、救護室いこ?」

「ううっ……。うぐっ……ぐずっ」


 リリールは座り込んだままだ。捨てられたように置いていかれた、三階のトイレの床に。


「リリール、大丈夫?」

「ぐすっ……うぐっ、ごめんなさい……ソドム……私のせいでクラス中から……」


 こんな弱々しい顔するんだね……。

 

「二カが出てきちゃったんだもん、仕方ないよ」


 ニカはたった一日で、リリールをダメにした。同級生を的確に使った囲みと、徹底的な集団暴力。そして、我慢の限界ではなく自分の意志でおもらしさせるという、屈辱で。


「うう……臭いよね……」

「私もさせられたことあるから大丈夫」


 させられたことあるから大丈夫。それは臭くないよっていうことには、つながってないかもしれない。おしっこだけだから、大したことはないけど。


「私……帰る」

「そっか」


 また、私はひとりぼっちだ。あ、今はクラス全員が私をいじめてるのか……。耐えれるかな……。


「う、うぐっ」


 でも、仕方ないよね。私みたいなグズにおもらしはお似合いだけど、リリールみたいなしっかりした子には……つらいだろうし。殴られすぎて怖くなって、あんなに短時間でみんなの前でしちゃったんだもん……。プライドもボロボロだよね。


「うわっ! リリールどうしたの!」


 パァン! と、突然鳴った音は、リリールが自分の両頬を打った音。


「だめだだめだ! このままじゃ! ソドム、ごめんね。私、あきらめないわ!」

「り、リリール……?」

「やりかえそう」

「どうやって?」


 だって、相手はクラス全員。先生も助けてくれない。


「考えるのよ! 行くわよソドム!」

「ど、どこに?」

「ベストリーカとカリアーカの家よ」

「でも、次逆らったら……」


 ニカの放った「次文句言ったら、みんなの前で糞させるにゃあ」という言葉。あの言葉の圧力は、本当にすごい。同じ排泄物でも、おしっことうんちでは心への負担が違うから。あんなこと言われたら、経験したことないリリールの心だって崩れる……はずなのに……。


「私、学校辞めたくないのよ。お母さんと約束したし、私、トランプ持ちになりたいし! ソドム、あんただってそうなんでしょ? だからずっとずっと耐えて!」

「えっと……」


 トランプ持ち。確かに憧れはあるけど、私は別に……メメメスさんに心配かけたくないだけで……。


「いじめって、こういうものなのね。危うく心が麻痺するところだったわ」

「えっと私は……」

「ありがとうソドム」


 今なんで、お礼を言われたのだろう。

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