245:六七班
それから私達は学校に戻り、制服に着替える。結構汗かいちゃったな……今日まだ制服洗う日じゃないけど、大丈夫かな。
「よーソドム! 今日はちゃんとできたのか?」
大きな声を出して帰ってきたのは、ベストリーカ。力任せの戦闘が得意な女の子。
「う、うん! ね、リリール!」
「そうね。課題はクリアよ」
「やったなソドム!」
成功したって報告ができるの、嬉しい。
「僕が近場を獲得したから体力も減らなかったでしょ? そこは感謝してほしいね」
「カリアーカはアタシの弟のくせに細けぇなぁ! そんなんじゃモテないぞ!」
「うるさいよベストリーカ。君だってモテないじゃないか」
カリアーカはベストリーカの双子の弟だけど、とても小さい。私と同じくらいの身長じゃないかな? まぁ、一センチ差で私がクラス一のチビなんだけど……。うん。そんなカリアーカは戦闘より、作戦をたてるのが得意。でも……私よりは強いけど……。うん。この二人とリリール、そして私をあわせた四人が六七班。私以外は、結構いい成績……。うん。落ちこぼれで誰も仲間に入れてくれなかった私を、押しつけられた可哀想な班。うん……はぁ、私ってほんと……だめだな……なんか落ち込んできた。なんで心の中で、こんなにうなずいてるんだろう私……。
「確かに、カリアーカに感謝しないといけないかもしれないわね。おかげでこうして久しぶりに、教室を独占できたんだから」
「リリール、なにも教室で話す必要はないんじゃないか? 別に集まろうと思えばどこだって――」
あれ? なにか話すのかな? まだ課題があるのかな?
「いいえ、だめよ。学校で起きてる問題なんだから! こういう話はどこでどう話すかも重要なのよ」
「リリールはそういうの好きだなぁ」
「僕は面倒なことは、嫌なんだけど……」
えっと、えっと……。
「とか言っておまえ一番考えてたじゃないか。昨日もアタシにずーっと話してたよな?」
「う、うるさいな!」
えっと、えっと……なんの話だろう。
「まぁいいわ。さて、六七班班長、リリールが宣言するわ! これよりソドム救出作戦会議を行う!」
「え、ええ、えっ」
「決めてたのよ、あんたが今日の課題クリアできたら助けてあげようって」
そ。そんな……。
「そうビビるなソドム。簡単にはこのいじめは終わらないし、気の長い戦いになるからなぁ」
「そうだよ。いじめの首謀者は六五班、昨日そこに七〇班のナリダとルザルが加わった。僕の見立てでは、もう二班の間に協定が結ばれているはずだ」
六五班。このクラス、いやこの学年で一番優秀な班。そこに学年二位の七〇班。そして、私達は、学年五位。私がいるのに五位ってすごいけど……でも、ちょっと相手が悪すぎるんじゃないかな。
「あ、あの……私が我慢すればいいし、無理しなくていいよ? ありがと――ふがっ!」
また顔掴まれた!
「ソドム、あんたがよくても私達がよくないのよ。まぁでも、カリアーカ達が言う通り、あんたにはもうしばらくいじめられててもらうわ。簡単にあいつらは落とせない。特にあの猫女はね」
どう答えたらいいんだろ。
「ねぇ、リリール。ソドムに話したのは失敗だったんじゃないかな? 下手に意識して余計なことされたら……」
「あんた参謀のくせに見えてないのね。大丈夫よ。ソドムは今日まで一回も私達に、助けてって言わなかったじゃないの」
「さ、参謀は慎重になるものなんだよ! まったく、脳筋リーダーで嫌になるよ」
「ははは! カリアーカ、いっつも家でソドムのこと心配しまくってたじゃないか!」
「ベストリーカ! なんで何度もその話をするんだよ!」
ほっぺたが熱い。これは私の涙だ。
「じゃあソドム。これからも私達はあんたを、足手まといのお荷物扱いするからそのつもりで。でも安心しなさい、私達が力づくであんたのことを救ってあげるわ。だからせいぜいあんたも、自分を救う努力をしなさい!」
「ああ、力技なら任せろ!」
「ねぇ! 二人がそういう事言うから、いつも僕だけが頭使うはめになるんだろ!」
「うん、うん……ありがとう……みんな」
強くなろうって、こんなに強く思ったのははじめてかもしれない。




