244:暴力の生徒たち
私はリリールと真っ黒な戦闘服に着替えてから、学校に備えつけの通信機でメメメスさんに連絡する。
「リリールが一緒に行ってくれるって」
『そっか、がんばってこいよ。ああ、上だ上! 次上で頼む! ああ、すまねぇソドム。私今忙しいからさ、帰ったら話聞かせてくれよ』
「う、うん」
騒がしいな。またいつものところかな?
「ほら! いつまでぼーっとしてるの! いくわよ」
「う、うん。ごめんなさい!」
学校から出て歩く。走らないんだね、今日。
「情報では、そこのアパートにターゲットの従業員が二人住んでるらしいわ」
「こんな近くに?」
「反バベル派だって、気がつかれてないと思ってるのよ。まったく、あんたが戻ってこなかったら一人でやるところだったわ。今夜クラス全員で一斉に動くことになってるから、時間ずらせないのよ」
「ご、ごめんね……」
リリールが班長の印でもある配給端末を取り出し、標的の写真を見せてくれる。うわ、普通のおじさんだ。
「ねぇリリール、あえて学園の近くに潜伏してるって……危険な人たちなんじゃ? 優秀な生徒はさらわれたりするって聞いたことあるし……」
「なに言ってるのよ。そんなやばい相手を、私達みたいな学生に回すわけないでしょ。ほら、帰ってきたわよ」
アパートの下の自転車置場に二人。え、え! もう行くの!
「はやく来なさい!」
「あ、えっと……うん!」
「な、なんだおまえら!」
うわ、いきなり気づかれた。
「名乗る必要はないわ!」
「その服、学生かっ! くそっ! なんでバレ――ぐあっ!」
リリール強い!
「ソドム! なにしてるの!」
「へっ? うあっ! でもっ!」
痛っ! この人、ナイフ持ってる。
「あんたが倒さないと意味ないじゃないの!」
「う、うああああ!」
「この餓鬼っ!」
ひっ、腕切られた! あ、あれ? そっか、よかった! 私の腕は金属製だ!
「ああああっ!」
「がっ!」
「浅いわソドム! そのまま殴り続けて!」
「う、うん!」
でも、まずはナイフを落とさせたほうがいいよね? 切られても治るけど、痛いし!
「うわっ!」
「武器を怖がらない! ほら右!」
「痛っ!」
今日の私達は武器を持ってない。どうしたら――――あ!
「うわわわ!」
「ぐがあっ!」
倒れたふりして、拾った石を投げつける。やった! ナイフ落とした!
「うああああ!」
「がっ! このっ!」
よし! 弱い! この人、訓練してない人だ!
「はぁっ! はぁっ!」
えっと、どうすれば課題クリアだっけ? あ、そうだ。気絶する程度の暴行だ!
「てえええい!」
「ぐっ!」
「ソドム、もっとガッツリ殴りなさい!」
しまった、ちょっと殴ったくらいじゃ、すぐ治っちゃうのか……。頭は届かないし……。よし、ならおもいっきり!
「う、あ! あれ?」
「うわっ!」
足が絡んで一緒に転んじゃった! でも私が上! それに、この距離ならっ!
「ええい!」
「ぎゃっ!」
やった、頭にいい一撃入った! おお、気絶したぞ、ナイスパンチ私!
「リリール! やったよ私!」
「はぁ、まぁ……課題クリアね。全くこの程度の相手に手こずるなんて、あんたほんとに、私と同じ学校の生徒なの?」
「う……」
「後の二人はしくじらないだろうし、これで久しぶりに私の班は脱落者ゼロね。どれくらいぶりかしら?」
いつもごめんなさい……うひひ、でも嬉しいや。




