表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
257/301

238:支配者の都合

 なんかよくわからなかったけど、戦いは終わったらしい。


「くそっ! くそっ! くそっ!」


 クロリナは座って、ずっと地面を殴ってる。そのたびに生まれる強い振動。私、あんな力で殴られてたのか。


「ねぇ」

「ああ? なんだぁ? さっさと進め、私が出てきた方に行けばあがれるからよぉ! くそっ! くそっ! くそっ!」


 …………。


「ねぇ」

「うるっせぇな! さっさと行けって行ってんだ――ぐがっ!」


 顔面に膝。座っていたから、丁度いい位置にあったし。


「なにしやがっ――ぐがっ!」

「無抵抗だと、わりと効くんだね」


 鼻からぼとぼとと落ちる、血。髪の毛を掴んで、何度も何度も膝を入れる。


「なにし――がっ! ぐっ!」

「えっと、なんかムカつくから」


 あなただって、そういう理由で私を殴ったんでしょ? ああ、なんでだろう。すっごくムカつく。


「ぐっ! ぐあ」

「本当に私に危害加えないんだね。偉いと思うよ、ちゃんとラヴクラインに言われたこと守って。私もさ、博士に引っ張られてこんな所まで来ちゃった」

「ぐっ! あっ」

「なんでなの? ねぇ、クロリナ。あなたならなんか知ってるでしょ? 私はあなたの娘なの?」


 さっき言われた、娘という言葉。きっとそれが私をムカつかさせてる。なんだか、すっごく不快なの。すごくすごく。


「ぐっがっ!」

「私さ、再生するからどれだけやっても平気なの。自分の体痛めるくらいの力でやっても、平気なの。それにあなたは不死者だっけ? ならさ、いつまでもいつまでもやれるねこれ」


 膝から飛び出した私の骨が、目の穴に入り込んでも抵抗しない。それって、オリジナルの言葉がそれほど、クロリナにとっては大事だってことだよね。なんか私と似てるね。私と、博士との関係に。それにしても強いなこの人、せっかく骨が目に入るように狙ってるのに潰れないんだ。


「くそっ! 痛てぇなぁ! 私は君ほど再生しないんだ! もう少し加減をしろ!」

「世界最強がなに言ってるの? それにまだ全然綺麗な顔だよ?」


 ほんとだ、一応再生はしてるんだ。うん、これならいっぱいやれるね。


「ぐっがっあ!」

「やっぱり、おもいっきりやれば効くね。それとも私、また強くなったのかな?」


 膝、膝、膝。何度も膝。他のやり方を考えるのもめんどくさいし、何度も膝。砕けて治り砕けて治り、砕けて治る膝を何度も叩き込む。治癒勝負ならさ、私負けないから。いつか削れるでしょ? 私の膝よりずっと頑丈なその顔も。


「ねぇ、ラヴクラインってなに?」

「がっ!」


 これは答えたくない質問なのかな。


「ねぇ、私はなに?」

「ぐっ! ぎ」

 

 これも答えたくない質問なのかな。


「私はあなたの娘なの? あなたはお父さん? お母さん?」

「……!」


 あ、雰囲気が違う。これは押せば答えてくれるはず。




 どのくらい膝を入れ続けたのだろう。私の想像通り、クロリナは私に関する事実を一つだけ話した。


「ソドムの町には、出産用のラヴクラインのクローンが地下にいる。それを孕ませるのが私だ」

「あっそ」


 聞いてみると、本当にどうでもいいことだった。


「じゃあ、私行くね」

「…………ラヴクラインを……オリジナルを殺さないでくれ」

「やだよ」


 クロリナが起き上がれないのは、私の暴力で顔がいろいろなっちゃったせい。露出するはずの脳みそは硬い金色の金属に包まれていたから、壊すことができなかったけど。もしかして、不死って、それだけのことなのかな?


「待て」

「なに?」

「君は、狂っているな」

「あなたの娘だからね」


 そんな実感は、ない。だから最後にもう一発いれる。クロリナの脳を守る金属と私の拳、どっちが強いか確かめたかったから。多分今の一撃は、今までで一番強い――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ