236:最後の試合
私と同時、レッドゲートから入場したのはクロリナだった。タイミング合わせて入ってきたのかなって思うと、ちょっと面白い。そしてその会場は……。
「健康サンダル……」
懐かしの、メメメスと対戦したあの会場にそっくり。ぐるりと囲む六角形の壁。その全てに拳くらいのボツボツがたくさん。叩きつけられたら痛いやつ。
「さあ! 本日の試合は世界最強決定戦! 不死者、世界最強! 神聖なる神使クロリナ・クロリーナと、残忍な気狂いソドムだああああああ!」
うひひ、世界最強決定戦のわりに実況あんまり上手じゃないね。
「さあ! まずは愛を込めて金を放り投げる一分間だあああ!」
あ、そういうのもやるんだ。
「さぁさぁ視聴者ども! クロリナとソドム、どっちが愛されてるか、金額で示せ――」
「うるせぇぞ!」
「はひっ……」
え? クロリナがキレたら実況の人変な声出して黙っちゃった! っていうか実況の人って、相変わらずどこにいるかわからないね。
「ソドムソドムソドム、おまえここになにしに来た?」
「バベルに……のぼりに……だけど」
この空気の重さは静かになったからじゃない、クロリナが私に殺意を向けてるからだ……。
「なるほどねぇ。アリスダウンも起こしてるみたいだし、まぁいいんじゃないかな」
あれ、これ戦わないパターン?
「で、なにしに行くの?」
「博士を……止めに」
多分……そういう理由だよね、私が今ここにいるのって。
「ごがっ!」
な、なんで私壁に叩きつけられて……、クロリナはあんなに遠いのにっ……なにも投げられてないのにっ……。
「大戦兵器、見えざる怒り。ステルス兵器ってやつだねぇ」
大戦……兵器って……。
「次はこれかなぁ?」
「うわっ! このっ!」
距離詰められた、右? 左? なにが来る?
「遅いよ。君、メメメスを食べなかったね?」
「ぎっ!」
わ、私の耳を食いちぎって……食べた? よし、耳はすぐはえた! うん、私今すごい速さで再生してる! これなら簡単に倒されない!
「大戦兵器、飢餓の獣。まぁ私は、ダダドゥディエダガドダダディスって呼ぶほうが好きだけどね」
「な、なにそれ」
「食うことでエネルギーをチャージする。食いすぎると糞を出さないといけないんだが、君は栄養ありそうだし、いいよなかなか」
今日のクロリナ――――雰囲気が違う。前と違って、遊びがない。
「君さ、ラヴクラインを殺す可能性が高いよね」
「え……」
「だから殺すよ。ここで」
来るっ!
「ふぅん、やるじゃん。アリスダウンは伊達じゃないのかなぁ? いや、その腕かな?」
「はぁっ、はぁっ」
拳を受け止めただけで、身体が壊れそう。いや壊れて治ったのかな……。うひひ、やっぱりこの腕、頑丈だ。腕だけはびくともしないもん。
「君はさ、めちゃくちゃ強いよ。本当に」
「ごぶっ!」
「回復力も異常。それだけ速ければ――」
「がっ」
あ、頭が割れ……。
「やっぱりね、そうだよねそうだよねそうだよね。これだけ速ければ頭も戻せるかぁ。すごいなぁ」
「ごっ!」
「君を殺すのは難しそうだ。なにを使えばいいかな?」
な、なにその腕……開いて中に……レンズ?




