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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
253/301

234:お詫びします

 私は囲まれたけど、大して問題はなかった。どう見てもその人達は、強くなかったから。


「あの、えっと、私バベルに――」

「この小娘が! 痛い目にあいたいか!」

「まったくこれだからよそ者は……」


 うーん、どう切り抜けよう……。


「駅に検問を作るべきじゃ」

「そうだそうだ! そもそもよそ者がこの街にくる事自体がおかしいんだ!」


 私を囲んではじまった、意見大会。うーむむむ……強行突破しかないのかな。


「まったく、今はこんなこ汚い娘が来ていい時じゃないんだぞ!!」

「そうだそうだ、ソドム様が来られたら大問題だぞ」

「クロリナ様に見つかったらどうするんだ!」

 

 …………。


「ああ、追い出そう」

「ああ、追い出そう!」

「よそ者は追い出そう!」

「あの、盛り上がってるところ悪いんですが、私ソドムです」


 痛っ……くないけど、いきなり殴ってきた! うわ! なんか投げてきた! なにこれ臭い!


「ソドム様はそんな真っ黒じゃないぞ!」

「言うにことかいて……ちょっと叱ってやらんとなぁ!」


 えええええ。はぁ、やるしかないか…………あ!


「えっと、えっとこれ! これ博士……じゃなくてラヴクラインの写真です!」


 ソドム様、クロリナ様なら、ラヴクライン様もあるのかなって……あ、あれ……みんな固まっちゃった。


「ら、ラヴクライン様だ……」

「まさか、あなたは本当にソドム様……」

「はい……私は本当にソドム様です」


 自分で様って言っちゃった。


「ああああああ、すいません! 申し訳ございません! 死んで、死んでお詫びします!」 

「え、そんなことしなくても……」

「おい、みんな死ね!」

「申し訳ございませんでした!」


 みんな同じナイフをとりだし、一斉に喉を切り裂いた。まるで、そのやり方を事前に教わっていたかのように。


「な……なんなのここ……」


 ほんとに死んじゃった……。いやいやいやおかしいでしょ! 私がソドム様ならこんな望みもしないことなんてしないで、道案内してよ! これ謝ってないよね! 自分勝手に話終わらせただけだよね!


「ねぇ、博士。これもバベルが……やらせてるの?」


 メメメスの真実を知ったときほど、憎しみはわかなかった。(むしろまったく。この人達が完全な他人だからだろうか?)


「ん? うわっ!」


 突然、光でなにも見えなくなった。真っ白で、強い光が。


「う、ん? あれ?」


 そして目を開けた時には、死体が一つもない。


「変な街……」


 今の大量自殺は本当にあったことなのだろうか。それとも私は、もうとっくに狂ってしまって――――。


「行かなきゃ……」


 バベルに行かないと、行かないと私は、もうわけがわからなくなって、このままこの街に消えてしまうかもしれない。そんな気がした。


「ねぇ! 誰か! 誰かいる! 出てきて! 私、ソドムだから!」


 博士の写真を振りかざし叫ぶと、周りの家の中から何人か出てくる。


「バベルにのぼりたいの! 私をバベルにつれてって!」

「仰せのままに、ソドム様」


 不気味だ。私に深々と頭を下げる人たちを見て、私はそう思った。そして私も、不気味の一部であると。

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