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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
252/301

233:パイナップル・ジュース

 駅にじっとしていても仕方ない。とりあえずバベルに近づいてみようと歩き出してすぐ、私は道に迷った。道が複雑すぎてまっすぐ進めない……。もうこれ、迷路だよね。


「うーん……」


 かといって、人の家ぶちぬいて進むわけにもいかないし……。


「あれ? あれっ……」


 そして私は気づく。博士への憎悪が消えていることに。


「だめだだめだ! 私はっ! あんなことをした博士を許せないんだ!」


 いっそ家を壊して突き進めば、意思を持続できるだろうか。


「おい、そこの黒いの」

「え、私?」

「お前以外に黒いのがどこにおる。この、まっくろけっけ」


 確かに黒いけど……そんな言い方なくない?


「喉乾いてないか?」

「うーん」


 おじいさんにいきなり差し出された、お茶……かな?


「飲んでみろ」

「え……ちょっと遠慮しときます……」

「人を疑うのか!」


 毒とか入ってたら嫌だもん。


「どうだ、これでもか!」


 ごくごくと飲んで見せるおじいさん。そして私に差し出された残りは、ほんのわずか。な、なんなのこの人。


「い、いただきます」


 仕方ない、飲むか……これ以上変なこと言われたら困るし。


「あれ、なんか甘い匂いがする!」

「パイナップルジュースを飲んだ後のコップに、お茶を入れたからな。どうだ、いい匂いだろう! わたがしみたいな匂いだろう!」


 確かにいい匂い……いや、だからなに?


「ああ、おじいさん! また知らない人に飲みかけのお茶出して! すいませんね。うちのおじいさん、脳が腐りはじめてて……」

「あ、えっと。いえ」


 そう言っておじいさんを連れて返ったお姉さんは、酷い匂いだった。きっと、服で見えないところが腐ってる。


「ここ……まさか」


 視界に入る人たちは、体の部位がどこかなかったり、補っていたり、腐っていたり。そして、いくつも出ている看板には『ふはいしたからだとりかえます』だとか『義手専門店」だとか……。


「ゾンビ……」

「ちょっとあんた! 私たちをゾンビと一緒にするなんて、いったいどういうつもりだい?」


 うわ、知らないおばさんに怒られた!


「ご、ごめんなさい」

「この罰当たりめ! はぁ、バベル様に失礼だと思わないのかねぇ?」

「あの、私来たばっかなので……」


 おばさんは大きなため息をついて、私にいろいろと教えはじめる。なんか腹立つけど聞いとこうかな、重要なこと言うかもしれないし。


「わかったかい? ここは、バベル様の力で腐っても最期まで人間であれる唯一の街なんだよ! ありがたやありがたや! あんたもそう思うだろ!」

「は、はい」


 反論すると、また怒られそうだな。


「私、バベルに行きたいんですけど。どっからいけますか?」

「ああ? あんたなんてこと言うんだい! おおいみんな! ちょっときてちょーだい! 罰当たりなよそ者がいるんだよ!」

 

 え、えっと……ええええええ! なんかめっちゃ人出てきたんだけど!

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