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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
246/301

227:私、弾切れを待つ私

 もう弾切れを待つしかない。そう思った私に、絶望的な提案が投げかけられた。


「僕はそろそろ帰るよ、君の足を奪って。クロリナ様に、殺すのはだめだって言われているからね」


 これはつまり、私の敗北が決定したということ。


「悔しいでしょ? 悔しいでしょ? 生たまま目標を達成できない! それは死ぬより苦しいよね」


 足を奪う。この提案は最悪に最悪だ。だって、私、内臓再生するくせに右足は……義足のままだもんね。つまりこれを外されたら私はもう、歩けない。


「えっと、ここと! ここと! ここか! 十発撃てばとれるかな、いや上手くやれば五発くらい?」

「くあっ……やめてっ」

 

 お腹の下の方、金属の右足と私の境目を指でなぞられる。それが、痛くもなんともないそれが、すごくすごく不快で――――。


「君さぁ、さっきクロリナ様の男か女をぶっつぶすって言ってたよね? でも君こそ、()()()()()()()()()()じゃないか!」


 だから……なに、もうさわらないで。


「さて、いっきまーす! ほら、足にバイバイしなよ」

「んぐうぅうううううっ!」


 ふと思う、何度も何度も内臓を吹き飛ばされてるのに、ここまで()()()()()()を保ててるのはやっぱり私が、化物だから――――。


「はぁああっ! 硝煙くさぁい! たまんないなぁ」

「あ……あ……」


 銃で人の体を切り離すことってできるんだね……。


「じゃあね、バイバイ。僕はいくね」

「うひひ、ひひ」


 私は、事実を受け入れ狂った、()()()()()、立ち上がる。


「え……えっ、なんで……なんで……足が、生えてる」

「この足を取りつけてくれたのはさ、博士なんだ」

「なんで……え、え?」


 はぁ、まだ痛いけど……足が増えたぶん毒が薄まったかな? ひひ、動ける。


「おい、近寄るな! 近寄ると撃つ――」

「この距離で私を撃つなんて、無理だよ」


 だってさ銃に手が届くもん。簡単に取り上げれちゃうでしょ?


「なんで! なんで……まさかあの義足は、再生しない足の代わりじゃなくて、再生を抑えてっ……」

「この銃、痛かったな。あなたも味わってみたら?」

「やめっ……ぎひいいっ!」


 銃の撃ち方はなんとなくわかる。博士のを見てたから。


「あれ、外れちゃった?」

「外れてないっ、外れてないよっ! ちゃんと当たった! ほら見て! ここ、かすって肉が」

「あ、そっか。こうして撃てばいいんだ」

「ぎぁああああああああああああ」


 太ももに近づけて、バン。うん、この銃やっぱ音がうるさい。


「足がっ、足がぁ」

「ちぎれちゃったね。でもこれ、あなたが私にしたことと同じじゃない?」

「ひいっ、ひいっ」


 弱いな。いや、私が強いのかな。それにしても……私の中身、どっさりちらばってる。こんなにたくさんぶち抜かれたのか。


「な、なにしてるっ……んだ」

「え? 撃ち込まれた弾をほじってるんだけど? だって毒でしょ? 痛いんだもん」


 金属の指は肉の体によく突き刺さる。中身ごと引きずり出しても、すぐ治る。うん、このくらい掻き出せばいいかな。


「えっと、こっちの銃はどうやって撃つんだっけ。この毒、ほんと嫌な感じだったよ」

「そ、それはや、やめて……」


 毒の弾をドバって撃ち出すほうの銃は、引き金を引いても発射されなかった。なんかどっかをガシャッとやってた気がするんだけど……うーん。


「わかんないや」

「がっ!」


 あきらめて殴るのに使ってみたら、相手の鼻と銃が壊れた。


「ふがっ! ふがっ!」


 めりこんだせいで、変な息の音になっちゃったね。


「ふがっ、髪が……金色に」


 ん? あ、ああ。黒くなりかけてた生え際の部分の話? なくなったの? なんかさ、私の色すぐ変わっちゃうね。次は真っ黒になっちゃったりして!(それは、色がないことと同じなのだろうか?)


「あなたのことは時間かけて殺すね。次の駅につくまでゆっくり」

「ふがっ……ゆるし……」


 だってさ、今の私すごく強いもん。足も生えちゃったし。だからね、そろそろ異常だって気がついてきた。私が、この世界の中でかなりかなりかなり異常な存在なんだって。だから、だから、だから! ごめんね、暴力に逃げさせて。


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