表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
244/301

225:君

「世界の有り様に嘆いた神は空に苦難を放つ。そして、羽ばたけなくなった鳥は鶏に類似し、猫はたらふく食べる権利を得たというわけさ」

「え、なに言ってんの? ねぇメメメス、あいつぶっとばしていい?」

「いいぜ。ぶちのめしてからいろいろ聞こうぜ」

 

 うん。普通に話しても、絶対会話にならないタイプだもんね。


「はぁ、野蛮だね。僕は理解できないよ。クロリナ様が君のような馬鹿女を認めただなんて」

「クロリナこそ野蛮だと思うけど」

「ええっ? 君はそれを本気で言っているのかい?」

「えっと、うん……」


 しまった、話にのっちゃった! そういえばクロリナも人のこと()って呼んでたな。なんかすっごく好きみたいだし、真似してるのかな。(私は博士の真似をしたことがあっただろうか?)


「はぁ、クロリナ様の素晴らしさが理解できないなんて。終わっている! 生物として終わっているよ君たちは!」

「えっと、うん……」

「僕が教えてあげよう! クロリナ様の素晴らしさを!」


 えっと、うん。


「あのお方は神に認められし存在」

「えっと、うん……」

()れなき心をもった()れなき存在」

「えっと、うん……」

「その証拠は肉体にあり!」

「えっと、うん……」


 えっと、うん。


「あのお方はね、この科学の時代に神話を固定するアンドロギュ――」

「そろそろいいかな?」

「聞けよ! ここ一番大事なところだから!」

「え、うん……」


 そんなガチで怒らなくても。


「アンドロギュ……まさか両性具有ってことか?」

 

 うわ、メメメスまで話に参加しちゃった。


「ああ、そうだ! あのお方はね、神に役目を与えられ男女双方の()()()を得たのさ! わかるかい? 肉体を自由に変えるだけのテクノロジーのあるこの時代に、()()()()()()()()()()が薄まったこの時代に、それを! わざわざ与えられた意味が! 神! 直々に! ああ、クロリナ様! 素敵です! あなたはまさに神使(しんし)!」

「神ってのは……オリジナルのことか?」


 メメメス、もう話を広げるのはやめよ?


「君たちがそれを知る必要はない」

「えー! 話してきたのそっちだよね!」


 さすがの私もびっくりだよ。


「とにかく! あのお方は現世唯一の御使い、生ける活動神殿、神聖なる――」

「えっと、クロリナには男女の特徴が両方あるってことだよね?」

 

 そろそろ話をぶった切らないと、終わらないよねこれ。


「そうさ! クロリナ様だからね!」

「ならさ、その片方ぶっつぶしちゃえば神から遠ざかるってこと?」


 このくらい言わないと、こういう会話は終わらないよね。


「はぁ。君はやっぱり、野蛮だよ」

「うん、まぁなんていうか……」

「ソドム! 避けろ!」


 座席に銃を隠して――! うひひ、甘いよ? 銃なんてさ、簡単によけれるし、当たっても大したことないし。


「ソドムっ! 隠れろ! 散弾だ!」

「え?」


 破裂音と、全身の痛み。な、なにこれっ!


「うああっ! 痛っ……このおおおおっ!」


 身体中に小さい弾が……? ああ、もう! 痛いけどこのまま殴り殺す! こんな傷すぐ治るから!


「う、うぎいいいいいいいっあああああっ」


 距離を詰めて殴りかかった瞬間、悲鳴を上げたのは私の方だった。

 

「効くでしょ? 僕特性の、毒の弾。君は傷が治るらしいからさ、考えたんだよね。最適な痛めつけ方を」


 あ、なにこれ……電気流されたみたいに痛いっ……。


「ほら、もう一発!」

「んぎっ!」


 近距離でお腹にっ……。だめっ、傷が治っちゃったら全部私の中に残っちゃう……!


「はははは! これだけ埋め込めば掻き出すのは不可能! 治る体が仇となったね! 蝕まれ続けろ! 僕の毒に!」

「ぎっああっ……あっっ!」


 な、なにこれ。熱いっ、お腹がっ、血が熱いっ!


「さて、お次はこの銃の出番だ!」

「それは……おいっ! やめろ!」

「だまれよ、脇役」


 銃口が私からメメメスの方に……。そして、とんでもなく大きな音と、叫び声。まさか――――。


「ふぅ! すごい反動。僕、感じちゃうなあ」

「くそっ! すまねぇソドム、足をやられた!」


 良かった、生きてっ――うぎっあっ……体が痺れっ……。


「うーん、肉が抉れただけか。ピンクの癖に頑丈だな。さて、君にはどのくらい効くかな?」

「があっあ!」


 お腹が背中にっ――あ、え?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ