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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
243/301

224:ソドムの町

 私はリューリーの通信機を返さなかった。必要だと思ったから、意識して奪った。


「返すのだ!」


 だからリューリーは怒っている。


「悪いことなのはわかるけど、博士から連絡あるかもしれないでしょ?」


 しばらく間をおいて、リューリーはニヤリと笑った。


「きゃははは! リューリーちゃんの教えをちゃんと理解したな? それでいい、それでいいのだソドム!」


 ありがとうリューリー。(人と距離を取るのがうまいね。おかげで私も楽だよ。)


「じゃあ、リューリーちゃんはバイバイするのだ」

「ほんとにいくの?」


 リューリーって、またひょっこり出てきそうだし。


「あたりまえなのだ。もうここから先はヤバ過ぎ確定なのだ。まともな頭なら、誰でもさよならを選ぶのだ」

「うひひ、私当事者だからおりれないや」


 リューリーはまた笑った。


「メメメス、リューリーちゃんと行く気はないのだ?」

「ない」

「はぁ、おまえもなかなかおかしいのだ」

「ありがとよ。おまえのおかげで覚悟を本物になるまで固めれたぜ」

「なんなのだそのダサい言い回しは」


 私は、人に恵まれてる。そしてそれを利用する気でいる。あ……利用できるから、恵まれてるのか。


『次はソドムの町、ソドムの町。到着前に一両目以降を切り離しますので、バベルに向かわれる方は先頭車両までお越しください』

「今の聞いてどう思ったのだ?」

「露骨だね」


 ソドムの町、列車の切り離し。もうここまで来ると、ギャグにすら思えてくるよ。


「いかに世界がバベルに支配されているか――。ま、せいぜい世界の大事(おおごと)に、全力で関わってみるのだ。主役たち」


 今度はメメメスがニヤリと笑った。メメメス……ごめんね。この大事(おおごと)の主役は私だけなんだよ。主役は、一人なんだ。


『それでは、先頭車両を切り離します。バベルに向かわれる方は、大急ぎで先頭車両までお越しください』

「え、もう!」

「さぁ! 走るのだ二人とも!」


 ここ何両目? え? え?


「またねリューリー!」

「またねなのだ!」


 このまたねは、高い確率で実現しない。きっとみんな、そう思っているだろう。


「先頭車両間に合うかな!」

「大丈夫だ、先頭はもう次……うおっ!」


 ガクンと揺れたのは……え! えええええええ! 目の前で切り離されたぁああああ!


「ソドム、先にいけ!」


 ()()()()()()()()は、二人同時に飛べるほど広くない。だからまず、私がおもいっきりジャンプ。


「メメメス!」


 なんとか着地、その間にも車両と車両の距離はどんどん開いて……。


「うおおおおっ!」

「届いて!」


 私は全力で手を伸ばしメメメスを()()()()()()()()()()()、強引に先頭車両へ引き入れた。


「はぁっ、はぁっ。なんとかなったな」

「うん、ごめんね? どっかぶつけなかった?」

「大丈夫だ。ぶつけたけど、私もわりと頑丈だからな」

「うひひ、よかった」


 そんな会話をする私たちに向けて、パンパンパンと聞こえた遅い拍手の音。明らかに称賛してない、拍手の音。


「いい友情劇を見せてもらったよ」


 なんか綺麗な顔立ちの、なんだか高そうな服を着た男の子……だよね? 多分。うん、どっちでもいっか。


「僕は鳥、君という猫を喰らう鳥だよ」


 うわ、この子も頭おかしいタイプだ……。

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