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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
242/301

223:嘘つきGIRL'N'ROLL

 博士の声は、博士の声だった。


『ソドム、わかってると思うが不用意に答えるなよ? これからする話は、おまえ以外には聞かれたくないのでね』

「そっか、博士はやっぱりバベルにいるんだね」


 私は嘘をつきはじめた。メメメスとリューリーに通信の内容を知られないために、嘘の会話をはじめた。とても、自然に。


『おまえは今、世界で二番目に強くなった。一番はもう知っているだろう? クロリナだ』

「うん、クロリナはすごく強かったよ」


 少しだけ話を合わせるのは、私の嘘がおかしくなってバレるのを防ぐため。


『これははじめて話すが、おまえと私の戦いは世界を救うためのものだ。そのためにおまえは、バベルをのぼらねばならん』

「うん、バベルには向かうつもりだよ。博士がどんなつもりでも」


 ああ、なんかすっごく上手にできてる。


『いい感じだ、いい感じだ。素晴らしいぞソドム、さすが私のソドムだ』

「う……うん」


 ()()()と笑いそうになったから、心の中に閉じ込めた。博士、博士。会いたいよ。声を聞いたら、抑えていた感情が……ああ、嗚呼。どこにあったかわかんないくらい、博士に会いたい()()()()()の。


『残る障害はクロリナくらいだ。あれは気が狂っているのでね、おまえを素通りさせてくれるかもしれないが、そうでないかもしれない。まぁ、高い確率でやり合うことになるはずだ』

「うん」


 心が入っていそうなところが、苦しくて()()気持ちいい。クロリナなんてどうでもいいくらい。


『あれは不死者、異常な存在だ。おまえと相性も悪い。だから勝つ方法を教えてやる』

「え?」


 勝つ方法って聞いて、思わずびっくりしちゃった。うん、でも変な感じにはなってないよね? 違和感ないもんね、今びっくりしても。(メメメスたちの方を見るな、嘘つきがバレるぞ。)


虐殺の愛(ジェノサイド・ラヴ)がメメメスの体内に入れたナノマシンは、おまえの強化用だ。クロリナと戦う時が来たら、彼女を食したまえ。そうすればおまえは世界一の暴力を得る』

「え……」

『夢で予行演習しただろう? 心配するな、メメメスはシャーベット人間。最初からその予定でおまえと一緒にいるものだ。食べてやらないと、かわいそうだと思わないかね?』


 口の中に、唾液が……。


『では、バベルで会おう。アリスもおまえに会いたがっているぞ?』

「博士、待って!」


 きれ……ちゃった。


「どうだったソドム」

「えっとね、クロリナはおまえを認めただろうから……大丈夫だって。あと、メメメスも一緒に……バベルに来たらいいって」

「そっか。ほんとに実力を測られてただけだったんだな。安心したぜ」

「え! リューリーちゃんは? リューリーちゃんは呼ばれてないのか? なぁ、リューリーちゃんは?」


 私が首を横に振ると、リューリーはがっくり肩を落とした。


「なぁリューリー、バベルってそんなにすげぇところなのか?」

「あそこが世界の頂点であることは間違いないのだ。はぁ、リューリーちゃん呼ばれてないみたいだからほんとにほんとに、もうおりるのだ。アツアツバカップル二人で行けばいいのだ」

「今までいろいろありがとうね、リューリー」


 リューリーはここで切っておかないと。どこまでバベルについて知ってるかわからないし、アリスとか言ってたし……私の嘘を暴かれると、困る。嘘つきは、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。


「ま、せいぜい感謝するといいのだ! ここまで導いてくれたリューリーちゃんに!」

「うん。そうだね。本当に、本当にありがとう」


 私はメメメスを()()()と、寂しそうな顔で()()()と見た。(もちろんこの顔は嘘だ。)そして、予測通りメメメスは優しく、優しく苦笑いしてくれる。ごめんね、こんな私で。私、やっぱり博士に会いたいの。

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