23:メタルアームアリス
試合当日――――Dリーグなのに控室が個室なのは、メメメスの人気のおかげ。今日はなんと、この闘技場ではまさかの一試合しか開催されないそうですよ!
「あら、緊張していますの?」
「うん、メメメス強いでしょ?」
「わたくしよりは弱いですわよ」
狂姫さん、会話のキャッチボールして下さい。
「棄権でもするつもりですの?」
「どうすれば勝てるか教えて下さい!」
「相手より強ければ勝てますわ。このゲェムは強尊弱卑、シンプルでいいですわね」
まぁ、確かに人気者はとことん優遇されるゲェムですけど。だからこそ今日絶対私、不利になると思うんですけど。
「あら? 肩のところ、こんなに皮膚なかったですわよね?」
「うん、博士がねカバーしてくれたの。どうしてもつなぎ目は細かいものが入る可能性があるからって。今まではしーりんぐ? で防いでたらしいんだけど……うん、なんだっけ?」
「内部でシーリングするのをやめることで抵抗を減らしたわけですわね。確かにこの部分はこうしたほうが……相変わらずラヴクラインは仕事とカメラの扱いだけは丁寧ですわね」
狂姫さんが私と博士のくれた腕の継ぎ目を指でなぞる。うう、なんか嫌なさわり方するねこの人。というか見すぎ! アリス服に着替えてるとこ見すぎだから!
「シリコン……ではないですわね。肌に見えて強度が桁違い」
「うん、だって博士だもん。あのね、それでねしーりんぐはなくしたわけじゃなくて、さいてきか……したんだって。なんかしーりんぐがすごいカメラがあるらしくって、それを参考に! 博士私のこの試合のために徹夜してくれたんだよ!」
博士がつけてくれたカバーは、つなぎ目を隠すだけのもの。だから綺麗な腕はほとんど隠れることなく、ちゃんと見えてる。でも前は肩と、首と肩の間の肩よりのところに腕と体をつなぐ金属の部品があったから、首のところが大きく開いた服着てそれを見せるのが好きだったんだけど、できなくなっちゃった……あ、でも今のこの皮膚にしか見えないやつも、博士が作ってくれたやつだし同じことだよね!
「さて、そろそろ時間ですわ。ああ、あなたの大好きな博士からの伝言、殺害同意ボタンは――」
「押すな、ですよね?」
「まぁ、そのほうがいいですわ。今回の目的はあなたの名前を売ること、マイクパフォーマンスもしっかりキメてきてもらいますわよ」
え……そんなの聞いてないけど……と、いろいろ質問したかった私は、メイドさんに呼ばれ控室を出ないといけなくなった。というか、メイドさんが入場のお迎えに来るなんてはじめてだよ。メメメスってどれだけ人気があるの。
「ここから先はお一人で」
「あ、はい」
メイドさんのお辞儀綺麗だな。というかさ、なんか廊下の向こううるさくない? え、え? ええええ? まさか! まさかこれ! 入場音楽! 今まで私になかった、入場音楽! これ狂姫さんの趣味かな? かっこいい! 激しいヤバイ!
「よしっ!」
私は走る、戦いの場に向けて。
「青コーナーより入場するのは金属腕アリス、ソドムちゃんだ! 勝率そこそこ、敗率バリバリ! どうしてこんな子がメメメスちゃんと戦えるのか俺にはわっっかんねぇぜぇ!」
え、何今日の実況の人、最低。でもメタルアームアリスってのは悪くないかも。見た目そのままだけど、うん。ってあれ? もう音楽消えた! 私の入場これで終わり?
「キュンキュンキュンキュン夢かわいい♪」
は?
「キュンキュンキュンキュン夢かわいい♪」
は?
「キュンキュンキュンキュン夢かわいい♪」
え、まさかこれメメメスのオリジナルソング!? 会場の照明ピンク! 私の時こんなんなかった! ちょっとまって何この差! というかこれDリーグなんだけど! ねぇ! 豪華すぎない!
「さぁてやってくるぞ! みんなが大好き! だいすこすこ! 夢かわいいピンク天使! キュートファイターのメメメスちゃんだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! そら! 夢かわいい! はい! 夢かわいい! それ! 夢かわいい! 夢っ! 夢かぁわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
いや、うるさいよ。




