220:旅の終わり
手加減されてるのが伝わる。それでこの威力だなんて……。いや! でもいける! 私は傷も治るし、かなり強くなってるんだから!
「え」
足が……震えてる。この人が強いからって、怯えてるの私?
「なんだぁ? なんだなんだなんだビビってんのかよ!」
もしかして……まさかこの人が、世界最強のクロリナ? でも、クロリナ本人は手を出さないんじゃなかったっけ?
「ソドム、大丈夫か!」
「リューリーちゃんが助太刀に来たのだ! っえ? あれ、なんで……。」
「来ちゃだめっ!」
一瞬で距離を詰められ、大雑把に殴られた二人は派手に床と音を鳴らす。
「今私がソドムと話してんだろ! なあ? 見りゃわかんだろ! なぁなぁなぁ! わかんだろ!」
「二人とも大丈夫!?」
「今私が喋ってんだろうがソドム! なぁ! ここにいるやつらは誰一人わかんねぇのかなぁ! そういうことがさぁ!」
二人は、無事か……。ということは今の攻撃も、加減してたってことだよね……。
「うう……痛いのだ……」
「あれ? 君、嗜虐の天使じゃん、なにしてんのこんなところで? ねぇねぇなにしてるの? なぁ? なにしてるの? なぁなぁなぁ?」
「りゅ、リューリーちゃんはっ……」
「なにしてんのか聞いてんだろ!」
「ぎゃあっ!」
リューリーが、あんなに簡単に。
「ひぎいいぃ、オリジナルに頼まれて、ソドムがバベルに行くお手伝いをしにきたのだ」
「敬語」
「?」
「丁寧な敬語!」
「ぎゃぴっ!」
抵抗できてない……いや、手を出すことすらできないんだ。
「嗜虐の天使、私の鉄の掟を言ってみろ」
「ば、バベルの客には手を出さない……です」
やっぱりこの人がクロリナ――!
「正解! 正解正解正解!」
「じゃあ……なんで」
「敬語」
「ぐぴぃ!」
加減、加減しまくってるのになんであんなに力強いの……。今の私より絶対強い。
「リューリーちゃんは……オリジナルに頼まれ……」
「理由なんて単純だよ君、君、君。客かどうかは私が決めるんだよ! そういうものだろ? なぁ? わかんねぇの?」
「ぎぃああああああああああ!」
ダメだ、体が動かない。
「さてさてソドムソドムソドム、君はさ、バベルの客なのかな? どうなのかな? どうなのかな? どうなのかなぁ!」
「う、あ……」
「答えろ、答えないと嗜虐の天使を殺す。あとそっちで意識失ってる、Sリーグ選手になりそこなったピンクい女もだ」
「きゃ……客です」
私まで敬語になっちゃった……。
「はい、失格。ちくしょう、つまんねぇなぁ」
え。




