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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
231/301

212:頑丈を破壊せよ

 馬乗りになって動きを抑えた。よし! この距離なら体格差を気にしないで、殴り続けられる!


「ぐあっ!」


 マスクの上から叩き込む、金属の拳。いける、この相手は壊せる、このまま続ければ絶対に勝てる。


「ぎゃっ! ぐあっ! がっ!」

「うひっ! うひっひひ!」


 なんか頑丈だけど、私の拳のほうが硬いんだよ! ああ、やっぱりタフな相手を倒す時はこの方法がいいね! 一発じゃ壊せないもんね!


「ぐあっ! がっ! ぎっ!」

「うひひ! 何発もつ? ねぇ! 何発!」


 ガードする腕は気にするな、そのまま殴ればそのうち折れる。掴まれても気にするな、所詮苦し紛れの防御もどき。大事なことは、頭部をしっかり損傷させること。私はただそれだけを考えればいい! シンプルに! シンプルに!


「ぐがっ」

「ねぇ? なんとか言ったらどう? ねぇ!」


 ねぇ、あなた誰なの? ねぇ、誰なの?


「た、助けてく……れ」


 ようやく喋ったと思ったらそれ? 私は()()()()()()()()()()んだけど?


「だめだよ、あなたのことも知らないけど、()()()()()()()()()でしょ? 戦う人でしょ? ならさ、死ぬこともあるよね!」


 そう、それが戦場だよ。それが戦いだよ。私はそのルールでずっと生きてきたもん。生き抜いてきたもん。だから私には殺す権利があるの! 知ってるでしょあなたも!


「ぎゃっ! ぐっ! ああっ!」

「うるさいよ」

「ぎゅ!」


 うひひ、喉殴ったら変な声出した! 今度はどこを――。


「ソドム、そのへんにしておけ。殺しちまったらいろいろ聞き出せねぇ」

「やだ! 私は殺したい――の……」


 私の腕を掴んだメメメスの手が震えているのは、怖いからじゃない。さっきの()()()()()()()()()()()()()のダメージが、残っているからだ。


「ありがとうメメメス…………。()()()()()。ねぇ、ちょっとだけ、叫んでいい?」

「いいぜ」

「う、う、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 叫び声に合わせて、視界がカラーに戻っていく。ああ、()()()()()()()や。


「おまえ……髪の色が……。」

「ん? ちゃんと戻ってるよ?」

「いや、戻りきってねぇ……遅いだけか?」

 

 髪の毛はちゃんと金色に戻ってる。メメメスはなにを見てるの?


「ほら、ちょっと見にくいけど」


 マスクの目の部分に使われていた、向こう側が見えないガラスの破片をメメメスが拾って私に見せる。


「あ、あれ?」


 髪の生えているところから全体の六分の一くらいが、黒いまま。じっと見ていても、戻る気配がない。


「痛っ……」

「え?」

「目が……痛いっ」


 さっきちぎった右目のあった穴の奥が……痛いっ。あれ……これ痛いだけじゃないっ……おかしい、目が……目の中がっ!


「メメメス、見て、目の穴見てっ、目の穴の中にっなにかあるっ!」

「お、おう」


 メメメスは中身がないせいでペコペコする私のまぶたを優しく開き、空洞を覗き込む。


「どうしたの? なにが起きてるの?」

「……目が……多分だが……いや、目が」

「ああ、そういうこと」


 メメメスが答える前に私は理解した。何故私が、目の穴になにかあるという感触に、そこまで恐怖を感じなかったのか。


「目が……できてきてるのか?」

「うん。やっぱり私、再生力強くなってるんだね」


 そういえば最初の頃は、傷が治るの痛かったな。でも今日はほら、もう痛みが収まってきた。ジクジク、ジクジク。大して痛くない、ジクジク、ジクジク、腐ったような痛みがジクジクして嫌な感じなだけ。(私はいろいろな種類の痛みを、耐えれるようになってきたのかもしれない。ジクジク、ジクジク。)

 あ、だんだん見えてきた。まぶたの裏って、こんな風になってるんだ。

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