211:銃弾
とっさに体が動いた。
「危なかったね」
はっきりと見えた銃弾。狙われてたのはこの男の子――違う、これはこの子を狙えば、私が動くと読んだ攻撃だ。
「手がっ……!」
「大丈夫、このくらいの傷すぐ治るから」
びっくりするくらい一瞬で、セカンドステージ……いや、髪が黒くなったからサードステージかな? ああ、なんかいちいち髪の毛の色確認しちゃう癖ついちゃったな。(余計なことを考えるのは、暴走するのが怖いからかもしれない。大丈夫、今回は大丈夫、男の子を殺したいなんて思ってない。)
「ほら、見て綺麗に治った。うひひ、すごいでしょ?」
「ほ……ほんとだ、すげぇ」
「でしょ? だから私の言う事聞いてね」
攻撃の雰囲気が、宿で襲われた時に似てる。つまり、コード404の絶対防御は通用しない相手。
「髪も……すごいな」
「うひひ、気持ち悪いでしょ?」
金色の髪はもう真っ黒。ああ、肌にも黒い斑点が……。
「かっこいい!」
「そ、そうかな――つっ!」
いきなり褒めるから油断しちゃったじゃん! いてて……。弾めりこんじゃったな……このまま治ると困るから、ほじくり出さなきゃ……。
「んぅう……」
指を突っ込んで……いいい……嫌な感触。はぁ、ナノマシンが勝手に体の外に出してくれればいいのに。
「痛いのか? ほんとに大丈夫なのか?」
「大丈夫だから前に出ないで!」
もっと建物に近づいて。この子を物陰に隠さなきゃ。
「ソドム。待たせてすまねぇ。この子は私が避難させる、いけるか?」
「メメメス!」
ナイスタイミング!
「リューリーはまだダメだ」
「うう、私のせいだ……」
「まぁその話は後だ、私もすぐ追いかける。撃ってきた方向はわかるな?」
私は頷き、一気に走り出す。メメメス、その子を頼むね。とってもいい子なんだ。
「いた!」
屋根の上、キラッと光ったのは、銃の上の覗くとこ。
「てぇええええい!」
私が力を入れて跳べば、余裕で屋根に手は届く。その手を軸に体を回して、軌道を読ませるな。
「たあっ!」
まずは銃を蹴り飛ばす。鈍器として使われたら、間合いが取りにくいから。
「あなたは誰! なんで私を狙うの?」
はい、ガン無視ですか……。装備的に軍隊の人かな? うわっ、ナイフ出した。
「私強いからね。痛くても知らないよ?」
リディアさんの部隊の人たちがつけていたような、ガスマスクみたいなやつで顔は見えない。目の部分のガラスには、私が映ってるけど……向こう側が見えないのは特殊なコーティングのせい。これじゃ目の動きは追えない……あ、もしかしてこのマスク、通信機内蔵してる? 仲間がいる? それとも一人?
「うわっ! っとっとっと」
ナイフ使いなれてるな……。動きも速い。うん、とりあえず不安定だから屋根からおり――――逃げられたらマズい、ここでやるしかないか。
「ならっ!」
屋根を殴って壊したら、相手の動きを止められるはず…………いや、この家も誰かが住んでる大事な……。
「つあっ!」
うう、さっきの男の子の話を思い出して躊躇しちゃった。冷静になれ、冷静になれ。私のほうがきっと強い。
「よしっ!」
いい感じ! いい感じに蹴りが入った! 二撃目でナイフも落とさせたぞ! よし、よしっ! このままいけ、私!




