206:所業
女の子が焼け死んだ後、見ていた人達は本当に勝手なことを言っていた。
「ひどいものを見せられたな」
「悪魔の所業だ」
「なんで道を広くしておかなかったんですか! こんなに危険なら事前にちゃんと説明するべきです!」
「目が……目が見えない、おまえらのせいで目がみえねぇえええ! おい! 聞いてんのか! おれは客だぞ! この町の人間じゃねぇんだぞ!」
みんな、望んでここに来たはずなのに。望んで処刑を見に来たはずなのに。
「ソドム、行こうぜ」
「うん」
私は、直径を大きくしながら壁面を上がっていく光の丸を眺めていた。それがまるで、空に帰ろうとしているかのように見えて。
「すいません、ちょっとよろしいでしょうか?」
「え? えっと、私?」
突然話しかけてきたのは、顔にやけどの痕がある男の人だった。この人もあのレンズで焼かれたのかな?
「あなたは、相当お強い方ですよね?」
「えっと……」
「ソドム、関わるな」
メメメスが私の手を引いて歩き出す。うん、露骨に怪しいもんね。
「この町には闘技場があるのですが――」
「え?」
「ソドム、聞くな」
「う、うん」
男の人は、私達と同じ速度でついてくる。
「ねぇメメメス、闘技場ってことは戦えばお金が……」
「だめだ。列車に乗り遅れたら困るだろう。それに闘技なんて言っても、絶対まともなやつじゃねぇからな」
暴力的地下遊戯は、まともだったのかな。
「お願いします、困ってるんです」
「うるせぇな! それ以上話しかけたらぶっ飛ばすぞ!」
とうとうメメメスが怒り出す。
「お願いします!」
「てめぇ、耳が聞こえてねぇのかよ」
えっと、聞こえてると思うよ?
「お願いします、あの悪魔を! あの悪魔を倒してください! リューリーを倒してっ、闘技場を取り返してください! お金は、お金はお支払いしますから!」
「え」
リューリー……。
「あなたはコード404に守られていますよね! 処刑台にあがったのに銃撃されなかった! なら、あのリューリーとも戦えるはず」
「メメメス、リューリーと私……少しだけ仲良くしてた時期があったの。リディアさんところにいた時」
「…………ああ、その話は聞いた」
私は少し考えた。今どうするべきかを。
「ごめんなさい」
断る。今リューリーと会うと……なんかありそうだし。だって今聞いた話だと、リューリーはコード404で手を出せない相手にむちゃくちゃやってるわけでしょ? 絶対厄介じゃん。
「そんな……」
男の人はそれ以上追ってこなかった。そして代わりに私の腕を掴んだのは……。
「おい、いくらなんでも薄情なのだ」
私よりちっちゃい、白髪の赤目……まぎれもなく、リューリーだった。




