21:コーティング:光学
私が動くと、腕は光を反射する角度を変える。関節にはまった球体が動き、私の意思を受けてしっかり動いてくれる。
「うわっと!」
危ない危ない、バランスを崩して手以外をつくとこだった。本当に博士の作ってくれた腕は頑丈。何回爆発を触っても、全然平気。
「いてっ」
地雷を触った瞬間に目を閉じるのも大事。たしか私の目はいい感じのコーティングがされてるらしいから、ある程度は大丈夫なんだけど、あんまり砂はいれたくない。
「えいっ!」
地面は絶対に手で着地、足をつくときはゾンビか鉄柱か瓦礫の上。なんだ、慣れちゃえば地雷なんて踏まないじゃん。こんなんだから、対生命体地雷は時代遅れの兵器って言われてるんだよ。なんか、こんな全身を使う戦い方初めてだな。ちょっと楽しいかも!
「うひひ!」
私の(アンティークな感じでいい感じに落ち着いた)金色の腕がオレンジ色に見えるのは、夕日のせい。そして私が夕日を真っ直ぐに見れるのは、目のコーティングのおかげらしい。そういえばこのコーティング、博士がすごいレベルの高い……マルチコート? かな? なんかそんなんだって言ってた気が。意味分かんないけど。(このコーティングは博士と会う前からあったものらしいけど……私には、博士と会う前の記憶はない。)
「よし! あと三十!」
ずっと数えながらゾンビを倒していた。元々人間だったって考えると、ただ数として数えてしまうのは申し訳ない気もするけど……うん、まぁ仕方ない。
「あと二十!」
全身ドロドロ、髪もぐちゃぐちゃ。そりゃそうだよね、ゾンビ相手にこんなに体をグルングルン回して戦ってたら……。
「あと十!」
臭いもひどい。はぁ、博士先に家帰っててくれないかな……。こんなんで博士の近くに行くの嫌だよ。でも絶対帰らずに写真撮ってるんだろうなぁ。
「あとっ、え、あれ。どうしよ」
残り二体と思ったけれど、もう動いているゾンビはいない。
「えっと」
「まぁ、だいたい百体だからいいですわ」
バン! バン! と地雷を踏みつけながら狂姫さんが近づいてくる。こうしてみるとこのへんの対生命体地雷って、本当に大した威力じゃないんだね。最初踏んだ時は凄く痛かったから、もうちょっと大きい爆発に感じたけど。これ、人間用かな?
「戦うということは馬鹿みたいに腕を振り回すことじゃない。己を知り相手を見て、自分を最適へと導いていく。そういうものですわ」
「え、えっと……ありがとうございました!」
「あなたの体の仕組みなら、内臓の損傷に耐えながら戦うこともできる。さぁ、一気にCリーグまでかけあがりますわよ!」
「はい!」
思わず返事しちゃったけど、内臓壊されるのは嫌だな。たとえ治るとしても。




