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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
212/301

193:寿司のあとにステーキ

「じゃあちょっと待っててください。焼いてきますので」

「焼いて……」


 何を焼いてくるのか、それはすぐにわかった。肉、家の奥から流れてきたジュウジュウという音、そしてその音がフェードアウトした、いや、アウトはせず小さくなった後、運ばれてきたのはっ……。


「来たっ!」


 まさかこれ、あえて待たせてたってこと? 匂いと音で、シースーによりスペースの少なくなった胃を刺激して……食欲を復活させてから肉に挑ませようってこと? ああ、すごいよ、すごすぎるよ! この食事は完璧に組み上げられた作戦(ミッション)だよ!


「熱くなっていますから、触らないでくださいね」

「待ってまし……あれ?」


 なんだこの変な黒いお皿は、なにものってないぞ……。しかも熱いって……嫌がらせ?


「ねぇ、ちょっと」

「はい! 今すぐお持ちしますね」


 いやいやいや、その前にこのお皿どけ――って、来たぁああああああ! 肉来たぁあああああ! ああっ、あの堂々たるお姿は!


「ステーキ!」

「はい。鉄板皿の上なら冷めにくいですから、ゆっくり味わってくださいね」


 把握! 把握いたしました、この謎の熱い黒いお皿の存在理由! これは肉を冷まさないための配慮皿っ! 熱き優しさのディッシュ!


「はぁあああ!」


 目の前で流れ出す、ジュワァ音は耳を癒やしつつも興奮させる背徳のリズム。そしてそれに合わせ踊るような、ピンピン小さく跳ねる茶色い液体。うわ! 飛んできた!


「え、エプロンによる防御が半端ないよ!」


 なにを口走ってるんだ私は!


「肉は切っちゃっていいですか? それともご自分で?」

「えっとえっと、おまかせします!」


 ここはプロに任せよう。あ、切る、切ってくれるんだね――――はっ、そういえばシースーとステーキって似てるな。スが入るのは高級なご飯の特徴なのかな? いやいや、エビには入んないもんね。うーん、ここに大いなる秘密がある気が……。


「さて、召し上がれ。こちらもお好みで醤油、ワサビをつけてどうぞ」

「は、はい!」


 綺麗に切りそろえられたステーキ。素敵!


「では、まずはなにもつけずに!」

 

 たくさんに切ってくれたからね。色々楽しませていただきますよ!


「ふんんんん……すごっ」


 ああ、もう私この肉の独特の臭み、好きになっちゃった! なんかもうこのまま噛み続けて、香りで脳を満たしたいよ。


「んん、ん」


 柔らかいのに食べごたえがある。はぁ、ステーキ素敵! ステーキ素敵!


「スっっっっっごく美味しいです!」


 伝えたい、この気持ち! この感謝を!


「ありがとうございます。新鮮なお肉が手に入りましたので、ぜひ召し上がっていただきたくて」

「こちらこそ()()()()()()()()! そっか、新鮮さが大事なんだね!」


 野菜もお肉も、大事なことは同じ。


「んん~美味しい!」

「よかったらまだまだ焼きますよ? たくさんありますので!」

「お肉パラダイスだね!」

「ええ、天国ですね」


 天国感あるよ。最高の夕飯だよ! しかもおかわり可! あ、そうださっき出てきたご飯に乗っけて食べてみよう。そういえば、お米のことをご飯って言うけど、ステーキとかいろいろな食べ物のこともご飯って呼ぶよね。うーん、ま、そんなことは後々!


「ん! ご飯にあう! あう! あうあう! あうあうあう!」

「今日のお肉はとても濃厚な味ですからね、最高の組み合わせだと思いますよ!」


 作ってくれた人も嬉しそう。ああ、ほんと素敵な晩ごはん。メメメスたちも地下でこれを食べてるのかな? ってことは地下は今、すっごくお肉の匂いがしてるのかな? ああ、地下室行きたい! 肉スメル空間に行きたい!


「はぁ、醤油もあうね! あうあうあう醤油あうだよ!」

「わさび醤油もいいですよ。そうそう、これだけ味が濃い肉はなかなか手に入りませんからし~っかり、味わってくださいね」

「そうなんだね、これなんのお肉?」


 そうそう。いつかまたこの素晴らしき肉を食べるために、そこんとこしっかり聞いておかないと! ぬかりない! ぬかりないよ私っ!


「あなたのお友達ですよ。あのギャンブルが得意な」

「へぇ! メメメスってこんなに美味しいん――――え?」


 え?

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