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ソドム・パラノイア  作者: Y
Sodom/paranoia
208/301

189:ギャンブラー

 なんか一回怒ったら冷めちゃったよ。はぁ、結局こんなの運なんじゃないの? 偶然当たってるだけなのに、予測できてるって思い込んじゃってるんでしょ? きっとこんなゲェムやるのはろくでもない――――。


「いや、俺達が悪かった……素人さん相手につい怒鳴っちまって。気を取り直してやり直そう! さぁさぁ、これからの未来、上か下かどっちだ?」


 う……今謝られると、超気まずいんですけど。でもまぁやっぱり悪い人たちじゃないのかな……ってあれ! 再開してるよねこれ! もう勝手に再開しちゃったよね!


「上だ」


 メメメスも賭けてるし!


「お、確かに今かなり上がってるからな。俺も上でいいと思うぜ」


 でもまぁ、今は上って感じだし……いけるかな。うんうん、勝てそう勝てそう、上がってる上がってる、あと少しあと少し……って下がったぁああああ!


「残念、下だったな。まぁ、次は勝てるさ」

 

 そんなぁ!


「さて、さて、もうひと勝負だ。ツキを取り戻してくれよ? 稼いで帰ってもらわなきゃうちの賭場の評判が落ちちまう。いくぞ? これからの未来、上か下かどっちだ?」

「次も上で頼む」

「また上か? 大丈夫か?」

 

 え、また上? 上で負けたなら次は下で良くない? なんかめっちゃ同情されてるじゃん。


「ああ、だめぇ……」


 思わず声が出る。だってグラフ、超下がってるし……。


「お嬢ちゃんの負けだ」

「そうか。悪いが私の金は今、なくなったぜ」


 えええええ。使い果たしちゃったの? なんでちょっと残しとかなかったの? 勝ってた時のぶん残ってたよね? 全部賭けちゃったの? ねぇ! っていうかなんでお金なくなったのに、ちょっとかっこいい感じで言ってるの? なくなったぜじゃないよ!


「おつかれさん、悪くない勝負だったよ。金ができたらまた来な……ってなんだその餓鬼、髪が黒くなってきてるじゃねぇか。妙な改造しやがって、きもちわりぃ」


 全員が私を見る。ああ、髪の色が変わって面白いから見てるのか。これね、サードステージっていうんだよ……髪だけじゃなくて気持ちも真っ黒……ってほどでもないかな今日は。でもなんか、簡単にサードステージ出るようになっちゃったし、こんなに落ち着いちゃってるんだね、今の私。痛みもちょっとしかないし……。


「ソドム、落ち着けよ」

「落ち着いてるけど嫌な気分」

「そうか。まぁ暴れてくれるなよ」


 そんなこと言われてもさ……。お金、なくなっちゃったんだよ?


「おいてめぇら、金がねぇならさっさと出てけ」

「このっ!」


 それ、今一番言われたくないことだから! 


「ソドム、やめとけって。大丈夫だから」

「なにが大丈夫なの!」


 メメメスのせいでお金なくなったんじゃん!


「いいからいいから。私に任せてくれよ」


 なにを任せるのさ! ああ、どうしよう。気持ちと呼吸が荒くなる。

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぁぁあん! ってなにするの!」


 いきなり耳に息! フッてやられた! メメメスに!


「いや、気がそれるかなって」

「それないよ!」


 そんなことじゃそれな――いや、それたけど! それたけどさ!


「おい、帰る前に一つ聞きたいんだが、そのグラフなんで今そんなに上がってんだ?」


 メメメスまだグラフ気にしてるの! 賭け事好きすぎでしょ――――あれ? グラフ超上がってる……なにあれ……なにあれ、おかしいぐらい上がってるよ? え、なんであんなに……怖い。グラフが()()()()()にくっついて、まっすぐになっちゃった。


「対象範囲の暴力の総数が上がればグラフはのぼる。でもこの伸び方は異常だぜ? 百パーセントラインに張り付いてるなんて、どう見てもありえねぇ。対象範囲の都市Aで、大虐殺でも起きたか?」


 あれ、都市Aってどっかで聞いたことある気がするけど……いつだっけな。


「そうかもしれねぇな。あそこはできたばっかで不安定だって言うし。まぁ、別にそんなこたぁいいじゃねぇか。そうだ、サービスで最初の賭け金を返してやろう。無一文じゃ困るだろ。これで飯でも食え」

「よかったねメメメス、お金返してくれるって!」


 なんだ、優しい人達じゃん。(と思ったら、サードステージが終わっていく感触があった。ああ、なんて現金な私! うん、きっとお腹すいてるんだな。)


「これは私の予測だが、今から九十秒後には、グラフがしっかり下がってるはずだぜ」


 ん? メメメスまだ賭け事やってるつもりなの? お金返してもらって帰ろ? もう賭け事はダメだよ?


「ソドム! あのコンピュータを触らせるな! とれ!」

「え、うん!」


 とりあえず言われたままに、モニターにつながった小さいコンピュータを確保! 一人突き飛ばしちゃったけど。あ、もちろん手加減したよ? お金返してくれるって話がなくなったら困るし。


「ソドム、そこに対象範囲はなんて書いてある?」

「たいしょーはんい?」

「あーいいや。見せてくれ」


 メメメスはコンピュータを覗き込んでニヤリと笑う。


「随分と狭い対象範囲だなぁ、半径五メートル。ちょうどこの部屋が収まるくらいか? しかもこれは現地モードだな。おいおい、グラフへの反映時間も遅らせてあるぞ? なんだこれは? ええ?」

「…………」


 えーっと……。


「だからなんだよ、てめぇらここから無事で出れると思ってんのか!」


 えーなんで急に怒り出したの? あれ、さっきすごい伸びてたグラフが……下がってる。っていうか普通に戻ったね。うんうん。都市Aは大丈夫だったってことだね、よかったよかった。


「逆ギレしてくるってことは、そういう話でいいんだな? ソドム、こいつらは総数ゲェムから殴り合い勝負に切り替えたいらしいぜ?」

「え? そうなの?」

「なめてんじゃねぇぞっ……な、なんで攻撃できねぇんだ……」


 私から狙ってきたね。


「小さい方から狙うとは下衆だな。でも無理だぜ? ソドムはコード404で守られてる。狙うなら私にしな」

「コード404だと……」


 えっと、確かにそうですが。

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