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私の金属の右足に、決勝戦前にラヴちゃんが取りつけたあのナイフ。足の中にしっかりと仕込まれているものだと思っていたけど、意外と簡単に取り外せる適当な後づけだった。そのナイフが私に教えてくれたことは、人は意外と自分の足の裏を見ないってこと。
「暑いな今日」
「うん、そうだね」
メメメスを連れてきてよかったんだろうか。もうクローンはないのに。これがメメメスの本体なのに。いや、連れてきてもらったのは私のほうかな……。(メメメスの車はどんな道でもよく走る。)
「それ、なんだ?」
「写真だよ」
「いや、まぁそれはわかるけど……ってこれ、博士が写ってるのか」
ナイフを取り外した時に一緒に出てきた、折りたたまれた写真。これは、私が撮った博士の写真。はぁ……ラヴちゃんの裏をかいたつもりだったけど、こんなもの入れられてるなんて。あ、そういえば博士がくれたカメラ、ドクターにあずけたままだったな。(そんなことも忘れていたなんて。)
「おい、待てよ」
「え?」
この写真を持ってると、心に良くない。破いて捨てようとしたら、メメメスが止めた。
「もしかしたらさ、博士とおまえ……仲直りできるかもしれないよな。だったら今それ破っちゃったら、いつか後悔するんじゃないか?」
「ふふ、あはは。メメメス変なこと言うね。うん、うん、わかったよ。とっておくよ」
また折りたたんで、ポケットの中にしまって、ボタンをしめる。こんな入れ方したら、結局破れちゃったりするかな? まぁその時は仕方ないか。
「そういえばもうアリスの服は着ないんだな。髪も結んでるし」
「うん、これ私用にリディアさんが作ってくれた服なの。戦いやすいんだよ?」
そう言うメメメスも、もうピンクの可愛い服じゃない。地味な色で動きやすそうで頑丈そうな、長袖長ズボン。あ、髪も私と一緒の感じで後ろで一つに束ねてるね。(そう、私達が向かう先は試合じゃないから。)
「ラヴちゃんってさ、ほんと、なにがしたかったんだろうね」
「さあな」
メメメスは相当強くなっていた。ラヴちゃんが開発した身体強化用ナノマシンを、体内に入れてもらったらしいから。ただ、私と違って傷は治らない。でも、私がサードステージに入らなければ、メメメスのほうが強い。都市Zを出て数日、二度出会った砂漠を徘徊する戦闘機械との戦いでそれはよくわかった。(そして私はなんとなく思う、このすごい性能を持つナノマシンは、本当は狂姫さんのために開発されていたものなんじゃないかって。)
「ソドム、これからは私がおまえを守るから」
「うひひ、前もたくさん守ってくれたよ」
相手が誰だろうと、私たちには関係ない。Sリーグ選手の私、そして人間判定通過者のメメメス。前にラヴちゃんにやられたようなことさえされなければ、コード404で止められることはない。(まぁ、バベルも余計なことしなければだけど。)
「強くなっても人間判定は外れないんだね」
「生まれもっての外都市住民の場合はそうらしいな。まったく、ひでぇ特権階級だぜ。存在自体が最低だ」
「最低じゃないよ、だってメメメスがいたから」
外都市住民は全員、人間判定通過者らしい。あれ? そういえば博士も人間判定通過者だって言ってたよね。ま、博士はラヴクラインだし別格か。つまりラヴクラインは、一番の特権階級なのかな。じゃあ私はなんだろね、うひひ。




