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ソドム・パラノイア  作者: Y
diary/six+1/song
202/301

diary「珈琲を飲んだのはだれ?」

 555555733000:/YF。この意味深な羅列は、科学者がよくやる悪ふざけだ。科学という歴史、その研究者という難解な存在。それらを後ろ盾に、さも意味ありげに唱えた大して意味のないもの。優れた知能を持つ人間が言うのであれば、きっと深い意味が隠されているに違いない。そう思わせることで無駄に悩ませ、思考を狂わせる悪戯だ。

 私は発見するその日まで、555555733000:/YFという文字の並びを一度たりとも見たことはなかった。だが、この()()を見ればわかる。これが、別の世界で、何度も象徴のように繰り返し表示されたものだと。その結果をもってしてこの世界に用意されたこれは、無意味の癖に意味を持たされようとしていると。


「ここに私以外のラヴクラインが来たのは約百年ぶりだ。ああそうだ、おまえのことは博士と呼べばよいのかね?」

「百年、意外と最近じゃないか」


 私のことなど、好きに呼べばいい。


「日本があった時はもっとたくさんいたのだがね。もうオリジナルは私一人しかいないのだよ」

「オリジナルが一人? 理解しがたい価値観だな」


 完全な人工生命体、そのオリジナル。では、彼女がオリジナルと呼ばないクローンとはなにか?


「しかし見事にソドムを調整したものだな。心は傷まなかったかね?」

「それは褒めているのか?」

「ああ、まさかラヴクラインを三体も経由し妄想の中(ソドム)にだけある現実(・パラノイア)

を逆算、555555733000:/YFを取り出されるとは思わなかったよ。終わりに隠しておいたのに、見事なものだ」

「555555733000:/YFとはなんだ?」


 あえて聞く。私は今そんな気分だ。


「555555733000はナノマシン。:/YFはなんだったか……まぁ、なんにせよ、単純な法則で作られた言葉遊びだ。そこに特に意味はない」

「言葉遊び? 不思議の国のアリスを気取っているのか?」

「ああそうだ。アリスは言葉遊びの物語だからな」

「アリスは夢から目覚めて終わる、だからそこにいる――――。まぁいい、その話は後にしよう」


 今あれについて議論しても仕方がない。問題は、意味よりも意思なのだから。


「さて、珈琲でも飲もうじゃないか」

「珈琲は薄めにしてくれたまえ。濃い珈琲を淹れてもらう相手は決めているのでね」

「味以外に拘るか。実に素晴らしいことだ、さすがは私のクローンだな」


 ソドム、おまえはここにたどりついてくれるか。私を追いかけてきてくれるか。私はここで、お前を待っているぞ。

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