diary「怒りの剣」
種を明かせば、私はコード404の影響など最初から受けていない。わざと、それらしく演じているだけだ。
「リディアさん? どうしました?」
「いや、なんでもない」
ディスクリミネータに操られていたものは、全て止まった。生きたものは死骸に、機械はスクラップに。まるで、機械と生物に根本的な違いなんてないと主張するかのごとく。
「なぁナターシャ。仮に私が……」
「はい?」
「いや、なんでもない」
仮に私の正体が、ラヴクラインの一人だとしたらおまえはどうする。
「リディアさん、虐殺の愛さんから通信です」
「そうか」
戦場が空に移り勝利を収めたということは、ソドムが使われてしまったということ。こんなことになるならいっそ、私のそばに置いたままにしておいたほうがよかった…………いや、いまさら後悔しても遅い。(それにこの感情は、後悔のようで後悔ではない。後悔に擬態した偽善だ。だめだな、今日の私はまるで昔の私のような考え方をしてしまう。)
「なんの用だ?」
『ドクターが自殺しましたのでぇ、そのお知らせにぃ』
「そうか。ソドムはどうした」
『バベルに向かいましたねぇ。黒き狂気兇器強姫が、余計な情報を渡したみたいでぇ』
私と同等か、それ以上の戦闘力を持つ、虐殺の愛。こいつも私も、今となっては届かないラヴクラインだ。いや……ソドムを失った時点で私達はゲェムオーバー、とうの昔に終わって――――。
「それで、同行者は?」
『友達が一人、一緒に行きましたよぉ』
「そうか、ならいい」
ソドム、おまえはこれからどんな地獄を見る。進んだ先でラヴクラインと友、どちらを選ぶ。
「リディアさん、今日は星が綺麗ですね」
「ああそうだな。さて、私達の仕事に戻ろう」
「はい」
ありがとうナターシャ。貴様がいなければ私は、ただ生きているから生きるということをやめていたかもしれない。そして、自分に足りないとわかっていても補えないものに押しつぶされていたかもしれない。




