表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
Crow Fly Free
190/301

177:黄色の錠剤

 なんか体をペタペタ触られて、冷たい器具で胸の音を聞かれ、いくつか質問に答えて……。


「え、これで終わり?」

「はい。とりあえず今日から寝る前に、このオレンジの錠剤をニ錠のんでくださいねぇ。あとぉ、気分悪いなぁとか感情がブワーッとなるなぁなんて時は、こっちの黄色い錠剤を。これは一日二回までですぅ」

「えっと……うん」


 オレンジ色の小さな薬と、黄色いちょっと大きな(でも小さい)薬をもらう。


「また一週間後に来てくださいねぇ」

「うん……」

「どうしたんですぅ?」

「こんなんでいいの?」


 薬で治るなら……もっと早くくれればよかったのになんて思ってしまう。


「それは()()()()、メメメスを怪我させたらいけませんからねぇ。あなたの治療カリキュラムはまた別、ただ準備に時間がかかるのでぇそれは一週間後からですぅ。ま、言うなればこの薬はそれまでの、ただのつなぎですねぇ」

「そっか。ありがとう――――ラヴちゃん」

「どういたしましてぇ」


 私が部屋から出ると、メメメスは廊下の椅子に座って小さな端末で動画を見ていた。でも私を見つけるとすぐに見るのはやめて「おつかれ」と言ってくれる。


「メメメス、待たせてごめんね」

「気にするな。私が好きでついてきてるんだ。さ、飯でも食って帰ろうぜ」


 帰り道に食べた小さな卵が何個も浮かんだラーメンは、とても…………美味しかった。(メメメスが言うには、ハウス系って種類のとても歴史あるラーメンらしい。)




 そして、その日の夜――――私はメメメスを大声で責めた。


「どうしてまた動画見てるの! うるさいよ! そのせいでっ……そのせいで私はっ!」


 私が悪夢を見て汗だくで目覚めた時、隣でメメメスが動画を見ていた。そこから聴こえるのは――()()()()()()()()()と同じ声。そうだよ、その動画のせいであんな夢を見たんだよ! 横でそんなの再生するからっ、寝てる私の耳に入って――。


「たまたま再生されちゃって……ごめんな」

「たまたま? たまたま動画が再生されるなんてないでしょ!」

「いや、このサイトはたまに広告の動画が流れてきてさ、触っちゃうと……」

「はぁ?」


 メメメスは言い訳する、音量をゼロにしてなかったからとか、そういう言い訳を。ねぇ? そこはごめんねじゃないの? 音量をゼロにしておけば動画が流れても、音は出なかったってことでしょ? じゃさ、普通そうしておくよね? それを忘れただけだよね? っていうかそもそも――――――――。


「それ嘘だよね? メメメス病院で動画見てたじゃん! 動画好きなんだよね? ねぇ?」


 なんで適当なこと言うの? 私は悪夢に苦しんだんだよ?


「そうだ、ソドム薬をもらっただろ? あれを――」

「私がおかしいっていうの? メメメスが謝らないのが悪いのに?」


 ああ、違う。メメメスは謝った、何回も謝ってた。私が怒鳴って、そのごめんねを吹き飛ばしただけ。


「ごめん……悪かったよ」


 ほら、小さい声で言ってるでしょ? ごめんねって。 


「なにがごめんなの? わかんないよ!」


 でもさ、それって本当に謝ってるのかな? ただ私が怒ったから、言ってるだけじゃないのかな?


「んっ」

 

 なっ……メメメス……なに……なんでキスを……。


「んぐ……ケホッケホッ」

「誤解しないでくれよ。おまえに薬を飲ますのはこの方法しか――――」


 口移し。危うく突き飛ばすところだったよ……。でもそうしなかった私は……怒ってるのに冷静なの? え、なにそれ? どういうこと? 怒ってるふりをしてたってこと? ねぇ? 私はなにがしたかったの?


「あはっ……あはは」

「お、おい、どうした?」

「なんでもない。ごめんね、メメメス。はぁ……なんでいつも()()()()()()()()()んだろ」

「仕方ないさ、それが精神汚染なんだろ? ゆっくり治していこう」


 今度は泣き出す私。ああきっと、明日からしばらく普通の日が続くんだろうな。そしてもうおかしくならないのかもって安心しかけた時に、またこうして壊れちゃうんだ。完全に壊れきれない癖して。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ