175:PIZZA
美味しいマグロ丼を堪能し、マグロカツを追加注文して、そのジューシーさに驚いた私が落ち着いた後、メメメスは暗い顔で私に「治療しよう」と言った。
「うひひ、そんなことだろうと思ったよ」
なんとなく、そんな気がしてた。だから私はこの街に向かう途中ずっと、自分を受け入れようとしていたんだよ。だから、大丈夫。
「リディアさんから頼まれている。腕のいい医者も手配済みだ」
「うん、ありがとう」
「歯が、再生したんだろ? それはナノマシンが過剰に動きすぎている証拠……そのままにしておくと、危険らしいんだ」
「精神汚染の話?」
そっか。私、思ったよりもきてたんだな。
「明日医者のところへ行く。今日は帰って休もう」
「晩御飯は?」
「ピザでもとろうぜ。知ってるだろ? ピザ」
うん! それはゴモラ67にもあったから!
その夜食べたピザは――――ゴモラ67のピザとは比べ物にならない美味しさだった。
「そういえばお金払ってないけどいいの?」
マグロ丼もたしか……払ってなかった気がして。
「ID支払いだな」
なるほど、手首にピッ! とやってたやつね。なんか埋め込んであるのかな?
「ねぇメメメス。メメメスはなんでゴモラシティに行きたいと思ったの?」
「私が毎日見ていた試合に出てる人たちが、どんな生き方をしているのか知りたかったんだ。なんだかすげぇ純粋な人生に感じてさ」
「で、どうだった?」
「怖いしつらいし、今みたいに気持ちが落ち着く時はほとんどなかった。だけど――――充実してた」
そっか……と私は答えて、メメメスのほうを向く。ここは大きなベッドの上。まるで二人で寝ることを最初から考えていたかのような、大きな大きなベッドの上。
「私治るのかな?」
「どうだろう。だが医者はラヴクラインだ。もちろん、おまえと会ったことのないラヴクラインだけど…………嫌か?」
「ううん、そのくらいじゃなきゃ信用できない」
はぁ、また博士と同じ顔の人に会うのか。でもそうだよね。普通の人じゃきっと、私の体はどうにもできない。




