171:都市Z
そこは、私が今まで見てきたどんな街よりも完成された場所だった。綺麗な道路、背の(値段も)高い(高そうな)建物。いろんなお店があって、たくさんの人が歩いている。
「住んで頂くお部屋までもう少しかかりますが、お腹はすいていませんか?」
「は、はい! 大丈夫です!」
本当はペコペコ。でもなんか街が賑やかすぎて、車から出たくなかった。
「こ……ここ?」
「はい」
大きな門がひらいて車のまま入っていった先は、大きな大きなビル。なんだこれ……大きすぎない? 何階まであるんだろ? ねぇ、大きすぎない? 大きすぎない?
「うわ、すご」
「はい、住心地も最高ですよ」
この人も、ここに住んでるのかな? あ、ここで車降りるのね。うわうわうわ、なにここ、豪華、豪華絢爛だよここ! ここ!(絢爛ってなんだろう。)
「このエレベータであがってください。生体認証でソドム様の階にしか止まりませんので、ご安心を」
「え、エレベータってなに? ちょ、ちょっとまっ……」
まっ! え、閉じ込められっ……え、なにこの部屋! 動いてる?
「こんなとこにいたらっ!」
だ……大丈夫だよね、リディアさんの紹介なんだし……。あれ? なんかあそこの数字増えてる……これ、登ってるんだ! 自動登り機! はぁああ、なんだろここ。いろいろヤバイんだけど。ああ、あの人にお礼言えなかったな。ここまで連れてきてくれたのに……。
「うわ!」
扉が……ひらい……。
「ふえ」
そこが玄関だって気がつくのに、随分と時間がかかった。入り口から見ただけでわかる超広な家。まさかこのビル、全部の階が一個づつ家になってるの? 家がめっちゃ重なってるってこと?
「ここが私の……家」
リディアさん、お金たくさん使ってくれたのかな……もっと小さい家でいいのに。
「すごい」
大きな窓、というかガラスの壁からは街が見下ろせた。うえ、高っ……お腹の下がきゅーんとする。ここ、何階なんだろ?
「…………」
ほんとに綺麗な街。どこも壊れてないし、じめじめもしていなさそう。あのへんは……街の外? 砂漠ではなさそうだけど……なんか平らでキラキラしてるな。
「だ、誰!」
コトンという物音、振り向いた先には――――。
「め……メメメス」
「おう、久しぶり……だな」
申し訳なさそうに私から目をそらしたのは……ピンク色の髪と瞳の、とても可愛い顔の女の子。
「メメメス! メメメス! メメメスなんだね!」
「うわっ! そうだ、私だ! メメメスだぜソドム! すまねぇ、本当にすまねぇ! おまえをひとりぼっちにして!」
「メメメス! 会いたかったよ……会いたかったよ!」
死んだはずなのに生きている。きっと、クローン技術がどうのこうのなんだろう。だって私達の生きている世界は、そういうことよくあるっぽいし。でも今は、そんな細かいことどうでもいい。メメメスが謝っている理由も、後で聞くから……今は再会を喜ばせて。




