表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソドム・パラノイア  作者: Y
Crow Fly Free
183/301

170:あなたは他人の指を折れますか?

 そうだ、指を折ろう。それなら治せるだろうし……。


「い……いい」


 嫌がってるのが、怖がってるのが振動で伝わる。この子……すごく、すごく力弱い。

 

「そんな力の入れ方じゃ折れないぞ? どうした、貴様の力なら簡単にいけるはずだろう?」

「リディアさんってさ……子どもの笑顔のために戦ってるんだよね」


 確かそんな話をしていた気が……。


「そうだが? だからこそ私は、躊躇なく子どもの指を折ることができる。よし、やれないなら手本を見せてやろう」

「ダメ!」

「なんのつもりだソドム」


 ほんとに、なんのつもりなんだろう。


「…………」


 まずい、リディアさんが怒ってる。そうだよね、これは仕事だもん。やるべきことをちゃんとできない子は――――。


「………………はは! はははは! やはり子どもはいいな、純粋に矛盾している。素晴らしい、やはり守る価値のある存在だ」

「え、え?」

 

 な、なんで笑ってるの?


「ソドム、貴様は私の隊をやめろ。この仕事は向いていない」

「そ、そんなこと!」

「ならこいつの右手の指を十本にできるか?」

「う……でも、私行くとこなんて」


 リディアさんがしゃがんで、私を優しく抱きしめる。


「選択肢がない、だからやるしかない。そういう生き方もあるだろう。だが貴様には選択肢がある、想像以上にな」

「え……」

「私の古巣である都市Zと交渉した。そこで生きろ。戦うための競技もある、殺害禁止の安全なやつがな。だが選手は強い、貴様の()()もじゅうぶん消化できるだろう」


 そんなこと、突然言われても。


「ゴモラシティじゃないから、メギドにやられることもない。あの辺鄙な土地なら、ディスクリミネータの影響も受けない。これがじゅうぶんな条件だということは、貴様でもわかるな?」

「リディアさ……」

「聞き分けろ。貴様がここにいつづけるなら私はいつかおまえに強要する、私と同じ暴力を使えるようになれと」

「じゃ……じゃあ、ディスクリミネータは誰が倒すの?」


 そうだよ、だって新兵器は私じゃなきゃ……。


「リューリーだ。あれは貴様と違って暴力に長けた大人だ、Sリーグ選手という条件も満たしている」

「…………」

「これで貴様のいる理由はなくなっただろう。さぁ、上にいけ。迎えの車がまっているぞ」


 リディアさんは私を離す。


「ああそうだ。安心しろ、この子に拷問はしない。誘拐で事足りる話なのでね、ちゃんと交渉が終わり次第ご帰宅願うよ」


 それ以上私には、なにも言ってくれなかった。


「お待ちしておりました、ソドム様」

「…………よろしくおねがいします」


 私は車に乗り、リディアさんから離れていく。涙が溢れないのは、私の心がどこかで安心してしまっているからなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ