169:苦痛がありました
オババと二人で一週間。私はその間に三回おねしょしてしまいました。……だってうなされたんだもん。
「リディアさんおかえり!」
「リューリーにも言えなのだ!」
「うん、リューリーもおかえり!」
このおかえりは、実は二回目。一回目はリディアさんたちの見た目を戻す前。そして今のは、元の見た目に戻った二人へ。そして、みんなでスープを飲む時間もなく私達は出ていく。急いでやらないといけないことがあるらしいから。
「またくるね」
「儂の寿命がつきておらんかったらの」
「そんなこと言わないで」
「ヒッヒッヒッヒ、優しい子じゃ。安心するといい、儂は生命延長も得意なんじゃ」
歩いて車まで戻って、日が沈むまで走る。そしてついたところは……。
「なにここ?」
「私の知り合いの拠点だ」
武装した人たちが守る、頑丈そうな……牢屋?
「リューリーちゃんは上でまってるのだ! もう地下はこりごりなのだ!」
「ああそうしろ。私もソドムと二人で話したい」
カビ臭い地下室。オババのところとは、雰囲気が違う……。
「え……」
一番奥の牢屋の中、鎖に繋がれ口と目を塞がれた赤茶色の髪の女の子。歳は私と同じくらい?
「ソドム。こいつを徹底的に拷問しろ」
「な、なんで?」
「交渉材料にその映像が必要だ。さぁ、はやくやれ」
鉄格子のひらく音に、女の子がビクリとする。怖いよね……見えない状態での、音。
「リディアさん……私……」
「ソドム。私達はそういう仕事だ。これができないのであれば、貴様はこの商売を続けられない」
「う……」
「それともなんだ? 私にやれというのか? 嫌な役を人に押しつけているようじゃ、立派なオトナになれんぞ?」
確かにリディアさんは私が捕まえた人を……拷問した。私が捕まえた人を。そう、私が捕まえた人を。
「あの、なんでこの子に拷問をするの?」
「理由か? そんなものは私が知っていればいい。貴様の仕事はそいつを殺さないように、徹底的に痛めつけることだ。ちゃんと考えてやれよ? 必要なのはそいつの苦痛だ」
でき……ない。
「この子、軍人? 戦う人なの?」
「いや、普通の無力な人間だ。抵抗される危険性はない」
「そういうことじゃなくて」
「どういうことだ? まさか逃してやれとでも? それで作戦に支障が出たらどうする? それが原因で、私達の仲間が死ぬことにつながったらどうする?」
リディアさんの言う通りだ、これは……これは必要なことなんだ。




