166:はじめてじゃないおるすばん
ウトウトしてしまって、寝てしまって、椅子から落ちそうになって目覚めると、部屋には全く知らない人が二人立っていた。
「こんなに胸をでかくしやがって……せっかく動きやすいように削いだのに」
「ヒッヒッヒッヒ。リディア、おぬしは一時期巨乳だったじゃろう。この作戦が終わった後も胸は残しといてやるからの」
「オババ貴様っ……!」
知らない声……。誰だろう、この巨乳。
「おい、ソドムどうなのだ? リューリーちゃんは可愛いままなのかどうか答えるのだ!」
……知らない声。誰だろう、この地味な子。
「随分寝とったからのう。わけわからんのもしかたないじゃろうて。こっちがリディア、こっちがリューリーじゃ」
「ええええ! 別人すぎるよ!]
「そりゃそうじゃ。儂が金もらって仕事したんじゃからな」
「声も違う!」
「他にもあちこち変えてあるぞ。まさかそれがきぐるみだなんて、誰も気がつかんはずじゃ」
あ、アメージング……! オババ凄腕! ああ、リューリーが渡された手鏡を覗いて超びっくりしてる!
「細胞融合に使ったナノマシンクリームの期限は一週間じゃ。まぁ、実際はもう少しもつと思うが、余裕をみることは長生きの秘訣じゃからの」
「それだけあればじゅうぶんだ。さて、時間は無駄にしたくない、行くぞリューリー」
「はぁ、早く終わらせて元の可愛い顔に戻りたいのだ。なんなのだこの微妙な顔は……」
「ヒッヒッヒッヒ、潜り込むのに可愛い顔だと目立ちすぎるじゃろ」
「おいオババ、私のこの胸は目立つんじゃないか?」
確かに二人とも、すごく普通だ。リディアさんの胸以外……ってあれ? 私は? 私は? 私は見た目変えないの?
「あのっ」
「ソドムはオババと待っていろ」
「え」
「なんじゃ、儂と二人きりは嫌か?」
「そ、そういうわけじゃ……」
ああ、行っちゃった……。
「さて、なにしようかのう」
「えっと、お疲れ様です」
「ん? ああ、ありがとう。おぬしはやっぱり優しいのう」
お疲れ様です。思わずなんとなく出た言葉なのに、オババはすごく優しく笑ってくれた。




