164:地下室マスカレイド
家の主は、暗い森がよく似合う老婆だった。
「ヒッヒッヒ、リディア久しぶりじゃのう」
キャラもバッチリ! なんだかおとぎ話みたいだ! 魔女みたいだ!
「おやおやそっちの子は、このババァの魔女っぷりがお気に召したかい?」
「えっと……あの、ごめんなさい!」
「いいんじゃよ、儂は本物の魔女じゃからな」
おばあちゃん、私に合わせてくれてるんだ! 優しい……!
「そっちのちっこい赤目のは大したものじゃな。元の身体からそんなに縮めたのに、よう動いとるのう」
「お、おまえ……リューリーちゃんの苦労がわかるのか!」
「ああ、もちろんじゃとも。遠隔操作ならいざしらず、大人が幼子の身体に戻って動くのは不便が多いからのう」
「うんうん、そうなのだ。リューリーちゃんは本当にがんばっ……ってなんでそれがわかるのだ!」
ヒッヒッヒッヒと笑うおばあちゃん。うん、確かになんでわかったんだろう。
「オババは外見手術の名手だ。そのくらいは検討つくだろう」
リディアさんこの人のことオババって呼ぶんだ! 私もそう呼んだほうがいいのかな?
「さぁ中に入りなさい。そんなに時間がないんじゃろう?」
小さな家の中はわりと整頓されていて……ってえええ! いきなり床もちあげて地下に降りてくの? ねぇ、もう少し前置きとかないの!? ああ、うん。時間ないって言ってたね……。
「寒っ……」
階段を少し降りるだけで息が白くなる。手すりを触ると指が濡れるのは、氷の幕が溶けてるから?
「な、なんなのだこの悪趣味な部屋は」
「おぬしらの姿を変えるための材料じゃ。ごつい部品は解凍しとかないと使いづらいからのう」
え、なになに? 先に下りたリューリーが露骨に引いてるんだけど……。あれ、冷たい匂いにかすか混ざる……この匂い……。
「オババ、しっかり頼む」
「ああまかせろ。完璧に別人にしてやるわい」
部屋の中にあったのは、身体の部品。私の腕みたいな金属じゃなくて生の……。そっか、だからすごく冷やしてあるんだ……。ていうかこの地下室、上の家より広い……。
「い、嫌なのだ……」
「新鮮なやつを使ってやるから安心するのじゃ」
「嫌なのだぁあああ! リューリーちゃんは今の体が好きなの――ぶぎっ!」
逃げようとしたリューリーを、容赦なく剣で殴るリディアさん。
「心配するな。今回は身体そのものを変えてもらうわけじゃない。外側に肉を貼りつけて見た目を変えてもらうんだ」
「それなら特殊メイクにすればいいのだ! わざわざ死体を使うなんて狂気の沙汰なのだ!」
「ヒッヒッヒッヒ、それだけ体をいじっとるくせによく言うわい。それに、肉を使わんとセキュリティにバレバレじゃろうが」
「そういうわけだリューリー。諦めろ」
私も肉……貼られちゃうのかな……。うう。




