160:BAD/coffee→Party?
車に囲まれた中に置かれたテーブルにはリディアさん、ナターシャさん、私、そしてリューリー。……なんだこれ。
「リディアさん、こいつでいいか? 大した味ではないんだが」
「心配するな、この客にはそれでじゅうぶん。泥水よりはマシだろう?」
「ハッハッハ! 望まれざる客ってことですか! せっかくなんで自白剤でもおごってやりますか?」
「いや、口を割らせるなら拷問のほうが安上がりだ。我々は自営業だぞ? 経費削減の心を大切にしろ」
「はっ! 失礼しました!」
銃を担いだままリディアさんの部下が……つまり私の仲間でもあるおじさんが、楽しそうに話しながら四人分珈琲を淹れてくれた。
「笑えない軍人ギャグはやめるのだ! それにリューリーちゃんはお茶がいいのだ! お茶しようって言ったのに珈琲はおかしいのだ!」
「なんだ貴様は客のくせに。文句があるなら飲まなくていい」
「なんなのだおまえは! リューリーちゃんは客だぞ!」
ジロリ。リディアさんが睨むとリューリーは下を向く。
「せ、せめてミルクと砂糖がほしいのだ……」
「見た目だけじゃなくて味覚も餓鬼になったか? なぁ、アンディ」
「リューリーちゃんはこだわり派だからな! 見た目だけロリなわけじゃ……おい、おまえ何故その名前を知っている?」
えっと……衝撃的な急展開でしょうかこれ。
「ゴモラ127出身アンディ・テイトーサ。重罪が発覚する前にSリーグにあがりゴモラシティを出る。その後姿を変えて……ああ、そういえば罪状は――――」
「あああああ! まったまった! まったなのだ! リューリーちゃんはリューリーちゃんになったのだ! だからそのへんで――」
「のだのだうるせぇぞ。おいナターシャ」
「はい」
ナターシャさんが薄型のコンピュータで出した画像は……え、これリューリーの前の姿なの? うわ……めっちゃ悪そうなおじさんだよ……。
「ゴモラ127がかけた懸賞金はまだ有効です。受け取り身分にも制限なし」
「りゅ……リューリーちゃんをどうするつもりなのだ……」
リディアさん、ナターシャさん、私。そしてさらにその周りには、武装した仲間たち。車の中には武器がどっさり。どうして気がつかなかったのかな、お茶なんてしたら不利な状況に追い込まれるって。
「私達は今は傭兵。仕事は自分で探さなきゃいかん。で、ナターシャ。この重罪人の懸賞金はいくらなんだ?」
「ま、待つのだ!」
「まぁ、珈琲でも飲め。最期の飲み物になるかもしれんぞ?」
ピチョン、ピチョンと聞こえるのはなに? あ……リューリー漏らしちゃったんだ……。うん、絶体絶命だもんね。




