158:完全版
リューリーの赤い目が黒く見える。えっと、周りの景色は……モノクロだ! うん、いい感じにセカンドステージに入ってるね私!
「最初はゼロで、二回目は一本。そして今度は二本! ころころころころ腕の本数かえやがって! おまえ、リューリーちゃんのことを馬鹿にしてるのだな!」
「いや、たまたまだし」
そういえば私、両腕ある状態でリューリーと戦うの初めてかも。まぁ、戦うの二度目だけど。
「んあっ!」
「キモ! いきなり喘いでどうしたのだ!」
うあ、体の中が……痛いっ……。ああ、もうほんとこれセカンドなのかな? 髪が金色のままだけど、サードステージが混ざってきてんじゃないのかな? うん、まぁ白黒で見えてるから金色かなぁって感じって感じだけど。
「んぎ……んううっ」
「き、気持ち悪い……のだ」
仕方ないでしょ! 今日超痛いやつなっちゃったんだから、ビクッと来たら身体くらい仰け反るって!
「はぁああんんっ。んんぁっ」
「キモ……」
うるさいうるさいうるさい! ちょっと落ち着いてきたところなの!
『ソドムさん、痛いんですか? 大丈夫ですか?』
「ナターシャさん……これってサード来てる?」
『いえ、例のセカンドの痛いやつかと……気分はどうですか? 攻撃的になってます?』
「うーん……いたったた……どちらかいうと攻撃されてる気分だよ」
自分の体の中からね……。
「うわ! 一人でしゃべりだしたのだ! キモすぎるのだ!」
「違うよ! 通信だよ!」
ああ、ようやく落ち着いた。なんか最近ほんと痛みが不安定なんだよね。えっと、本当は痛いのはサードステージだけで、セカンドは視界が白黒になるだけで、サードは髪と目が黒くなって、一気にブワッとなると肌にも黒い模様というか点々みたいなやつが出てきて……あれ? セカンドでも多少は痛みがあるんだっけ? んんんん……何ヶ月も前から不安定だからよくわかんなくなってきたよ。
「痛っ! なにするの! いきなり殴らないでよ!」
「敵の目の前でボーッと考え事してるのが悪いのだ!」
え? 私ボーッとしてた?
「さぁ! 戦うのだ!」
「え、うん。まぁいいけど」
いいけどっていうか、やるしかないんでしょ。いくよ、手加減しないからね?
「ぐっ! 完全版ソドム強いのだ!」
「そうかな?」
「でもっ、リューリーちゃんも負けてないのだ!」
「うあっ!」
ま、前より強くなってる……!
「うひ」
「なに笑ってるのだ! さっきから気持ち悪すぎるのだ!」
あれ? なんでだろう。なんかすっごく、楽しい。
『ソドムさん、サードステージになったらリディアさんが止めに入ります。だからそのまま安心して全力を』
「うん! ありがとうナターシャさん」
なんか歓声が聞こえる気がする。ああ、なんか試合が楽しみで楽しみで仕方なかった、あのころみたいだよ。




