154:割り切ること
私が車のあるところに戻ると、何人か怪我をして休んでいた。私は……傷も全部治ったから無傷。
「ソドムさん大丈夫ですか!」
「ん、もう大丈夫。それに最近あんまり痛くなくなってきたんだよね。なんでだろ」
ナターシャさんが心配してくれているのは、サードステージの痛み。本当に、最近は痛いけどあんまり痛くないんだよ。
「あ、髪色がもう戻って……サードステージから帰ってくるのも早くなってますね」
ゾワゾワしたから腕をまくってみると、黒い斑点が消えていくところだった。これ、前よりサードステージが強く出てるってことかな? 最初は髪と目の色だけだったし。
「リディアさんは?」
「まだ戦ってます」
「うわ、やっぱり強いねあの人……」
愛剣をふりまわし戦うその姿は……絶対に敵にまわしたくないって感じ。
「ナターシャさんは戦わないの?」
「はい、今日は私が出る幕でもないとリディアさんが」
ナターシャさんが戦わない日は増えている。私に戦闘中に使う用の通信機を渡すようになってからは、特に。それは多分……私が一番話しやすい相手がナターシャさんだから。
「それにしてもソドムさん、強くなりましたね。意識的な意味でも」
「うん、ナターシャさんたちのおかげだよ」
一緒に戦いだして一年。私はその中で、割り切ることを覚えた。
「ナターシャさん、私が来たこと……」
「気にしていないと言ったら嘘になりますが、私も戦闘くらいしかとりえがないので気持ちはわかりますよ。さぁ、シャワーを浴びましょう! 全身ドロドロじゃないですか」
そっか、今日は人を相手にしていたから……。
シャワーを浴びて出てくると、ナターシャさんが私に通信機を渡す。戦闘に使う用とは違う、私専用の。
「コヨーテからですよ」
「え! 本当!」
コヨーテは本当によく連絡をしてくれる。(夢の中みたいに喧嘩もしてないし、戦うなとも言われてない。)
「ソドム、ありがとうな! 今日もがんばってくれたんだろ!」
「うひひ、そんなことないよ」
通信のはじめにいつも言ってくれるこのお礼の言葉は、私の大事な宝物。コヨーテはわかってくれてる。私が、そしてリディアさんたちが戦っているのは弱い人達を守るためだって。直接コヨーテたちを守る戦いをしたわけじゃないけど……そう言ってもらえるのはすっごく、すっごく嬉しい!
「俺も強くなったら一緒に戦うからな! 待っててくれよ! 俺がおまえを守るから!」
「ひひ、うひ。待ってる」
ああ、今の笑い方気持ち悪いって思われたかなぁ。
「最近怖い夢見なかったか?」
「う……見た……」
「どんな?」
「コヨーテと喧嘩しちゃったの」
「俺はおまえと喧嘩なんてしねぇ! 大丈夫だ!」
ああ、ありがとうコヨーテ。
「泣いてるのか?」
「うひひ、コヨーテありがとう」
「泣かせてごめん。でも大丈夫だから。俺、友達だから」
「うん」
ああ、次の戦いもがんばろう。




