151:一方的に
寄生された人間というのをはじめて見た時、私は寒気がした。車の中のモニターに映っているその人達は顔や頭に、あのSリーグ選手になる機械を大きくしたような足がいっぱいある金属の塊が……まるでしがみつくようにくっついていたから。そしてその足が、深く深く食い込んでいたから。
「ソドムさん、大丈夫ですか?」
「うん」
今の私の弱点は、時々くる戦うのが怖い病。狂姫さんとの戦いを思い出して、足がすくんじゃうあれ。でも……そんな私でも戦えるのは、ナターシャさんたちが気を使ってくれるおかげ。
「交戦中の人たちは都市Hの兵のようです。救援信号が出ていますが――」
人がぐちゃぐちゃに混ざって戦ってる。あんな近くで撃ち合ったり、斬りあったり。すごい戦い。なんだっけこの戦いのタイプ……あ、合戦だ!
「ソドム、貴様はドクターの交渉が終わり次第つっこめ」
「うん、リディアさん!」
ドクターは今、通信機で一生懸命話している。都市Hの偉い人と。それにしてもこの車すごいな。四人でいても余裕だし、部屋みたいになってるし、いろんな機械があるし。
「よし、話がついた。報酬は要求以上、必要経費は別途支払いだ。存分に暴れてきてくれたまえ」
よし、がんばってお仕事だ!
「ソドム」
「なに? ドクター」
「気をつけて戦うのだぞ」
「私コード404があるから大丈夫だよ」
そう。私は傷つかない。傷つけられない。
「いや――それに、飲まれるなよ。おまえが一方的に戦えるのは、おまえのせいじゃないのだから」
「うひひ、ありがとう」
ありがとう、ありがとうドクター。私の気分の悪さをわかってくれて。でもね、それを私は選んだの。ドクターのソドムみたいにさ……私は綺麗じゃないんだ。
「ソドム、おまえはいつもどおり一人で走って奥から突き崩せ」
「わかったよリディアさん。よーし、れっつごー!」
私は走る。すり抜け、駆け抜ける。人と人がぶつかっているよりさらに向こうへ。だって、私が暴れると、倒さなくていい人まで巻き込んじゃうかもしれないし。(私は気にしながら戦うのが下手だし。)
「バキン、ドカン、ボキン」
今まで強い人達と戦ってきたから気がつけなかったんだよね、私がこんなにも強いって。コード404で守られるって、こんなにすごいことなんだって。ナイフを持ってても銃を持ってても、ディスクリミネータにあやつられてるせいで強くなってても、私の前ではなにもできない。
「バキン、ドカン、ボキン」
今日の相手は寄生されてるせいで、余計なこと言わないから気が楽。顔が隠れちゃってる人も多いし。
「バキン、ドカ……はぁ、なんか怖くないな。ただ襲ってくるだけの敵って」
なんかさ、こんなの戦いじゃないよね。ほんとに一方的、ドクターの言う通り一方的だよ。こういうのなんていうんだっけ?(虐殺か。)
「……うひ……うひひひっ」
ほら、きたきた。私の中の黒いやつ。ああ、楽しいな。




