150:ディスクリミネータ
寄生するやつがいっぱい、超いっぱいあって、それでたくさん敵ができるから人類総出で戦わないとどうにもできない。そしてその全てを止めるには、ディスクリミネータ本体を倒さないといけない。で、まだその本体はどこにいるかわからない。正しく理解できているかどうかわからないけど、私が覚えたことをまとめるとこんなかんじ。
「本体が見つかるまでは宿主たちの相手をしてくれたまえ」
「で、本体が見つかったら新兵器を使ってソドムさんが――ドクター、その役私が代われませんか?」
「だめだ、おまえでは弱すぎる」
ディスクリミネータの本体は、この世界にいる誰かが選ばれるらしい。そしてそれが――人間判定通過者やSリーグ選手だった場合、コード404の絶対防御がある。しかも本体は中身にかかわらず超強いから私じゃないと戦えない可能性が高いらしい。
「私は特異通過者です! コード404は私には――」
「だから力不足だと言っているだろう」
「でもっ――――!」
「ナターシャ、そのへんにしておけ」
「はい……リディアさん」
ありがとうナターシャさん。でも私はさ、戦ってしか生きられないんだよ。だからここに置いてくれてるんでしょ?
「私はこの戦いで、ディスクリミネータとバベルの関係を暴きたいと思っている。もしそれが証明できれば、バベルの――」
「貴様はバベルを崩す気でいるのか?」
「いや、そんな大それたことは考えてはいない。だがこんな世界は誰かが変えねばならん」
「そんな事を言う暇があったらコード404を突破できる強力な武器の開発でもするんだな、そうすれば私がソドムの代わりにやれる」
私しか適任がいない。うん、仕方ないよね。リディアさんはコード404の影響受けちゃうんだし。(あの剣では倒せない相手ってことかな……。うう、ちょっと怖いけど……ドクターがすごい武器作ってくれてるんだよね?)
「もちろんそうした道も考えている。だが新兵器はおまえの剣のようなシンプルなものではない。最低でも使用者がコード404をキャンセルできる必要がある。すまないが理解してくれ、今は選択肢がないのだ。未来にその選択肢を増やすためにも――」
「語りたい気持ちはわかるが、そこまでにしてくれ。貴様の話はダルい」
リディアさんちょっと意地悪!
「そうか……すまない」
ほら、落ち込んじゃった。
「だが、貴様の言いたいことはわからなくもない。確かにこの世界は子どもの笑顔が簡単に消えすぎる。だが……」
リディアさんが私を見る。あれ、なんかすごく悲しそう。
「それを取り戻すために一番がんばらなけれなならないのが子どもだというのは、気に入らないな。いつだってそうだ、大人は相手が子どもだということに甘えすぎている」
…………。
「リディアさん私やるよ? 大丈夫だから」
「そうだな、今のところはやるしかない。だがこの作戦、貴様以外のSリーグ選手が英雄になる可能性だってある。他の勢力が事を片付ける可能性だってある。そうなってくれることを私は願うよ」
えっと……。
「ドクター、そういうつもりでいいか?」
「ああ、おまえの言うとおりだリディア。ソドム、卑怯者の私を許してくれ」
「うひひ、私どうせ戦ってないとおかしくなっちゃうからさ。でも死にたくないから、すごい武器ちょうだいね?」
「任せろ。約束する」
リディアさんと一緒にいることを選んでから、私はもう何回も戦っていた。そのおかげで私はまだ、私でいられる。




