diary「平等」
私は平等に愛すことができなかった。やはり私は、私のソドムを可愛いと思ってしまう。健気に私を待ち続けたソドムを。
「ドクター、私行くね」
一緒に暮らそう。私は一度だけそう言った。だがそれ以上押すことはできなかった。そんなある日、アイソレイの村が私達のために戦ってくれたソドムを受け入れてくれると、ナターシャが連絡をよこした。そして私はそれに、名案だという答えを返したのだ。
「おまえには感謝してもしきれない。なにかあったら、私にできることがあったら――」
「ありがとうドクター。目と腕をつけてくれたししばらく一緒にいてくれたし、もういっぱいいろいろしてもらったよ」
あの日この子がわざと漏らして、自分を辱めてまで私の気を引こうとしたのをわかっている。それでも私はこう、白々しく言うしかない。
「こちらこそいろいろとありがとう。おまえには感謝してもしきれない」
これが弱者の生き方なのだ。ああ、まるであれを人類の亜種とするか別種とするかどうかを議論したあの月の多い晩――――最低だな、こうして大事に思考をそらし己をごまかそうだなんて。
「ソドムちゃん、また会いに来てね」
「うん」
二人のソドムはとても仲良くなった。でもそれは、見た目以上に一方的な友情なのかもしれない。私のソドムは、戦ったことがない。だからこれは、混じりけのないただの感謝でしかない。ただの……ただの感謝だ。でも私は、その無垢な顔が愛おしい。愛おしくてたまらないのだ。
「コヨーテ元気かなぁ」
その一言が、私の心をいくぶんか楽にした。
頼む、卑怯者だと罵ってくれ――――もし彼女がもう少し、いや私と同じ大人であったなら私はそうお願いすることができただろう。




