139:強者
そこからの戦いも、やっぱり私は押され気味だった。でもさっきまでより全然ちゃんと戦えてる。何発か当たってるし。あ、そっか視界が白黒になってるから……。
「あら? 髪と瞳が黒く……ようやくサードステージに入りましたわね」
「そうみたいだね」
「でも、そろそろ終わりですわ」
さっきより動きが見える! これなら確実に受け止めて打ち返せ――――え?
「戦いに夢中になってしまうのはあなたの悪い癖ですわ。それにその腕を信頼しすぎてしまうところも」
一瞬意味がわからなかった。思いっきり転んだ理由が、右腕が外れてバランスを崩したからだなんて。ああ――――ドクターから無理したら接続部品がもたないかもって聞いてたのに!
「あなたはわたくしと対等に戦えていたんじゃない。右肩に負担をかけることをわたくしが意識していたおかげでできた隙を――――」
「うひひ、そんなに丁寧に説明してくれるなんて、やっぱり上品すぎるよ。丁寧にするなら戦い方のほうだよね」
「それはなにかしら?」
眼帯を取り外して、中に突っ込んであった義眼を取り出す。まぁ、ただのはったりなんだけど……。
「これはね、特性の爆弾だよ!」
投げつけてビビってくれたらその隙にって思ったんだけどね、ダメだったみたい。簡単にキャッチされちゃった。
「はったりですって顔に書いてありますわよ?」
「う…………」
「ソドム、確かにあなたは強くなった。品のない戦い方も覚えて、バリエーションも増えた。でもね、わたくしはSリーグ狩りと呼ばれた女、あなたよりよっぽど――――」
「え」
義眼を投げつけられて、狂姫さんが殴りかかってきた。その拳を私は左手で受け止めようとして、でも、手になんにも感触がなくて……。
「み……見えない?」
最後に見えたあれは、コヨーテがくれた砂漠狼の……。
「そりゃそうですわ。あなたにはもう目がないんだから。それにしてもちょうどいいものぶらさげていましたわね。突き刺すのにぴったり」
「え、あ、暗い。なんで……見えない……どこ――ぎゃあ!」
「Sリーグ選手なんかにならなければ、簡単に殺してあげれたのに……。ま、仕方ないですわね」
暗い。嘘、なに、なに……どこ? 怖い。




