137:故郷の使い方
ナターシャさんと再開したのも、地下道の中だった。でもそこにいたのは、ナターシャさんだけだった。
「ナターシャさん!」
「ソドムさん、がんばったんですね」
私は涙が止まらない。
「リディアさん、教えていただいたとおり煉瓦の意思の戦闘部隊は三百名ほどでした。私達の先発隊は街の西側に残っていた抵抗勢力も加わえて、二十名ほどで交戦中です」
「そんなに少ないの……」
「いいぞナターシャ。貴様はこの作戦が終わったら――――」
「私も行く、だって私はSリーグ選手だからっ……強いんだよ!」
私の頭にリディアさんが、ポンと手をおいた。
「気持ちは嬉しいが、貴様には役目がある。それに私達は負けに来たわけじゃない、勝ちに来たのだ」
突然天井がゆれて、臭い水にバラバラと欠片が落ちる。
「な、なに……今の音……」
「抵抗勢力が隠していた爆薬を、各所に配置しておきましたので。これからドンドン爆破していきますよ」
「ナターシャ、この短期間でよくやった」
「はい、ゴモラ645は私の故郷ですから」
それから続けて何回も大きな音がした。その音を聞きながら私達は進む。そして――――――分かれ道。
「リディアさんは右へ、ソドムさんは左へ。それぞれの標的に近づけます」
「うん……。ねぇ、リディアさん」
「なんだ?」
「生き残って」
「先に言われてしまったな。貴様も、生き残れ」
「うん!」
ここを走れば地上に出る。ナターシャさんに言われたとおり私は走る。
「二人とも、死なないでくださいね」
その場に残ってつぶやいたナターシャさんは、どんな気持ちだったのだろう。
「はぁっ、はぁっ」
臭い水の流れが強くなったのは、思ったより長いこの道が坂になっているから。光が見える、あそこに――――。(コヨーテのくれた砂漠狼の牙を握って――また離す。)
「あら、久しぶりの再開なのにずいぶんと汚いですわね、ソドム」
「狂姫っ……!」
次名前を呼ぶ時は、さんはつけないって、私は決めてた。でもその心は何度も揺れた。でも、今は揺れてない。だって私は、たくさんの人達と一緒にここにたどり着いたんだから。
「呼び捨てにされると、ムカつきますわ」
「メメメスを殺した理由は、私が勝つまで聞かないよ」
「どうせ聞いても、あなたは死ぬから意味がないですわ」
一気に距離を詰められて、一発。でも私は受け止めた。ああ、衝撃が体を突き抜ける。でもちゃんと見えた。今の私なら戦える――――この人と!




