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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
145/301

136:地獄は笑顔で

 泣きながら走った。私には銃弾が飛んでこないことに。ああ、なんで走る前に気がつかなかったんだろう。対生命体地雷が無い道の幅なんてそんなに広くないって。


「GO! GO! GO! 止まるな!」

 

 壁の上から撃たれてる。何発も何発も。きっとみんなに当たってる。私には当たらない。だって私は地雷の上を走れる。だから、みんなが囮になって私だけ……私だけ……離れて、離れて走ってるから! でも止まったらダメ、行かなきゃ、壁の中に行かなきゃ。


「ソドム、そのまま真っすぐいけば穴がいくつかある! どれでもいい、適当に入れそうなとこに入れ! 中に入ったら壁沿いに左だ、すぐに追いつく!」


 リディアさんの声は右から聞こえる。ああ、砂嵐のせいでみんなの姿があんまり見えない。でも、見えたとしても、見えたとしても、私は――――。


「前を見て走らなきゃ」


 自分に言い聞かせる。言い、聞かせろ。


「はぁっ! はぁっ!」


 近寄ってみると、壁は結構ボロボロで大きな亀裂みたいな穴がいくつかあった。


「ここから通れそう……」


 体を横にして……。


「ぎゃっ! ぎゃあっ!」

「…………!」


 一人じゃない、今の声。ああ、私はみんなの名前を知らない。


「そんな……」


 砂嵐が弱くなって見えた。壁にたどり着けずに倒れている……。


「まだ生きて……」


 頭を撃たれて死んだ。そっか、嵐がなくなって狙えるようになったんだ……。


「ぎゃあ! ぐあ!」

「!」


 今度は壁際を伝う声。な、()()()撃たれてる――――。


「ソドム、私の部下の死を無駄にするな。それにこの死は織り込み済みの死だ。割り切れ」

「リディアさ……」


 私が入ろうとしていた穴の中から手が出て、私を引っ張った。


「みんな……私……を中に入れるためだけに……」

「声を出すな。見つかる」


 ドボン。穴の中に入った私は、今度は足元にあった穴に落ちて――そこは、臭くて浅い水のある暗闇。


「ナターシャたちと合流するぞ」

「……うぐ、うっ」

「泣いてくれているのか。私の部下のために」

「ひぐっ……うっ」


 私達だってたくさん殺した。でも、違う。微笑んでくれた人たちが死ぬのは、つらい。ああ、そっか。戦うって笑顔をなくすものだってわかってるから、みんな笑ってたんだね。


「いつ聞いても嫌なものだな。死を覚悟した者の撃つ銃の音は」

「戦ってるんだね……生き残った人たち……ううん、違うね。死んだ人も、みんなで今戦ってるんだね」

「よく気がついたな。素晴らしいぞソドム。私達が勝てば死んだ奴らは負けたことにならない。そうだ私達は全員で戦っているんだ」


 地下に流れる汚れた水。その中を進むリディアさんの背中は、なんだかとても小さく見えた。

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