133:丁寧に
丁寧だ。リディアさん達の戦いを見て、私はそう思ってしまった。たくさん人が死んだのに。
「リディアさん、この人達って……」
「素人、賊の類だ」
移動する私達に襲いかかってきたバイクの集団は、あっという間に倒された。(私を守るように広がった、リディアさんの顔を隠した部下の人たち。銃を使ったことない私でも、無駄撃ちは一切していないってわかるあの感じ。まるであたりまえかのように倒れていく人たち。あれは本当に、すごかった。なんていうか、本当に丁寧。丁寧で完璧な戦い。)
「どうして私を守ってくれたの?」
「貴様が黒き狂気兇器強姫と戦ってくれるおかげで死なずに済む部下の数は多い。だからだ」
「えっとでも私は強いし、今もちゃんと戦える――――」
「お喋りは後にしてくれ。私はもう少し仕事があるからな」
リディアさんの前に連れてこられたのは、生き残った人。足と腕しか撃たれてない……これ、わざと殺さなかったんだ。
「う……あ」
「おい、なぜ私達を襲撃した」
「…………」
「答えろ」
悲鳴。リディアさんがすごい速さでナイフを取り出して、目を突き刺した。
「答えろ、次は真っ暗になるぞ?」
「どうせ殺すんだろう!」
「そうだ。だが殺し方というものがあるのは貴様もわかるだろう?」
その人は黙った。だから――――残りの目も潰された。
「ああっ、見えねぇ、なにもっ……見えねぇ!」
「そりゃそうだろうおまえにはもう目がないんだから。だが心配しなくていい、耳と口だけは残しておいてやる。私とお喋りするためにな」
「言う! 言うから普通に殺してくれ!」
丁寧だ……本当にこの人達の暴力は、丁寧……すぎる。私は胃の中身が逆流しそうになりながらも、目が離せない。
「煉瓦の意思だ……俺たちを雇ったのは」
「おい、手の指を綺麗に裂いてやれ。そうだな、ワイヤーソーを使え」
「なんでだ! 言っただろう! 俺たちは煉瓦の意思におまえらを襲えと言われただけ――――ぎゃああっ! ぎゃああああ!」
人差し指を先っぽからまっすぐに……。あんな使いにくそうな道具なのに、上手……すぎ……。
「うえぇえっ! げほっ! おええっ!」
「なにを吐いているソドム。こういう暴力は見慣れないか?」
「う……げほっ、げほっ。ちょっと、びっくりしちゃって……」
嘘だ、私は今すごく怖がってる。だってあの人ちゃんと答えたのに、手の指を十本あるみたいにされちゃったんだから……。
「ああ……ああ」
「言え次はもっと痛いぞ?」
「雇われたのは俺達だけじゃない……人数は大体二百人……」
「なるほどなるほど。よし、頭の皮をゆっくり削げ」
「ぎぃいいいいいいいいいいいいい」
なんなのこれ……めちゃくちゃだよ。
「その中にあ、あ、あいつがいた……」
「誰だ」
「ラザーサだ……元永遠革命軍の」
拷問をするなら終わりがないと思わせるのが大切だ。その人をその場に捨てて静かに離れた後、リディアさんはそう、私に教えてくれた。
「殺してくれ、もう言うことはねぇ……全部言った、なぁ、どうして……誰も答えてくれないんだ」
その声が耳にこびりついたせいで、私はその日の晩怖い夢を見た。




