130:技量
その剣は、自動で生命体をちょっとだけ追いかける……らしい。ただほんとにちょっとで、剣だけだと当たらないどころか動かないからリディアさんが適切な場所に運んでいるらしい。それでなんかよくわかんないけど、コード404で手が止まっても当たるらしい。
「あれ、もしかしてその剣を使えば誰でもSリーグ選手叩けるってこと?」
「そんなに簡単ではないぞ。攻撃しようという意思が止められ続けることに耐えられるやつはそういない」
?
「自分が止められる直前に手を離し無機質兵器として独立させて当てる。そして即座に握り直し連撃。どう考えても、相当な負荷ですよ」
あまりのわかりにくさにナターシャさんも思わず解説! うん、ごめんねナターシャさん。その解説も全然わかんない。
「んーんん……じゃああの剣を奪っちゃえば倒せるってことだよね……」
「その通りだ」
私とナターシャさんは思わず後ろに跳んだ。なに……今の……なにもされていないのに殺されるかと思った。
「長時間戦えば私のパフォーマンスは落ちる。今説明されたとおり、負荷がかかっているからな。だが、それまでに殺しきればいい。それに私の体力は簡単にはつきん」
「…………」
「Sリーグ選手をこえるものが存在することが不服そうな顔をしているな。心配するな、そうそういるものではない。貴様のような化物も、私のような優秀な戦士も」
うーん、うーん。わかりません話が! でもなんていうか、私は勝てないってことだよね?
「さて、交渉に入ろう。私達としても黒き狂気兇器強姫は邪魔だ。まぁ、私だけでも殺せるがそれなりに削られるのが惜しい。貴様があれとぶつかってくれるなら、そこまでは私が連れて行ってやろう」
唐突にそんな話する? でもまぁ、連れてってくれるなら――――。
「……ナターシャさん、どうする?」
あれ、私はなんで今、ナターシャさんに聞いたんだろう。
「ソドムさんが望むなら」
「…………」
「ナターシャ、貴様の願いも叶えてやろう。ケリがついたあと貴様が私の部隊に入るというなら、アスファルトの連中にゴモラ645を受け渡してやる」
ナターシャさんは少しだけ間をあけてから、うなずいた。
「よし、決まりだ。私の部隊は明日の夜には到着する。今はちょっとした訓練をさせているのでね」
「訓練……」
「戦死者を選ぶものを潰させている。奇しくも私は貴様らの仲間の敵をとった恩人になるというわけだ――――おい、これはなんのつもりだ?」
私は気がついたら殴りかかっていた。しっかりとあの鉄柱みたいな剣で防がれたけど。
「さすがその右腕は良い金属を使っているな。私の剣をへこますとは。まぁ、今のは許そう。だが次は殺す、いいな」
「…………助けてくれてもよかったよね……知ってるってことは見てたんでしょ! あの時っ!」
「次は殺すと言ったが?」
「ソドムさん! やめてください。いいんです、いいんです……」
ナターシャさんが私をきつくきつく抱きしめる。震える手で。




