128:諦めと無謀
それからナターシャさんは私に、やめましょうと言った。
「ナターシャさん」
「もちろん諦めるというわけではありません。戦力をたてなおしてやりなおしましょう」
確かに、そのほうが良いかもしれない。私が狂姫さんを倒せたとしても、今から向かう街には他にもたくさんの敵がいるはずだし。
「わかった。仕方ないよね」
「ありがとうございます。ソドムさん、あなたにもなすべきことがあるのに……」
「大丈夫」
ナターシャさんと一緒にいたいし……という言葉は声にならなかった。それから私達は、用意してもらったテントへと戻る。
「誰かいる!」
「誰かとはなんだ。貴様らと会うのは二度目のはずだが?」
顔に大きな傷、背負っているのは鉄柱みたいな剣。
「リディアさん……でしたよね」
「特異通過者ナターシャ。生命を加速させコード404が追いつかないようにする。ラヴクラインの実験本能をそのまま形にしたような代物だな」
「何か用ですか?」
「手伝ってやる。もちろん条件つきだが」
手伝う……まさかこの人、私達と一緒にゴモラ645に……。
「貴様はSリーグ選手、ソドムだな?」
「だから、なに?」
「最初に言っておくが、私はその特異通過者と違いコード404の影響を受ける。つまり貴様には攻撃できない」
「…………え?」
なんでそんなこと教えちゃうのかな。もしかして、嘘?
「あ、ってことはナターシャさんにも攻撃できないってこと?」
「それは残念ながら無理です。私達特異通過者はコード404による防御を突破できるだけで、自分が防御できるわけではありません」
パンパンと二回、リディアさんが手をたたく。会話をやめろと言うかのように。
「ナターシャ、大切な情報を簡単に漏らしすぎだぞ? 私達と一緒に戦うならそんな緩い頭では困る」
「私、一緒に戦うつもりは……」
「コード404の絶対防御。あんなものは実は大したものではない」
なんか話を途中ですぐ変えちゃう人だな……。
「どういうこと?」
「私ならコード404の影響を受けながらでも、貴様を殺せるということだ」
「!」
立ち上がり剣を構えたその姿は、圧倒的な威圧感を持っていた。




