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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
135/301

126:歩き続けろ

 砂に脚が沈む。なんだか体中の関節に砂が詰まったみたいに感じる。(きっと砂は詰まってないのだけど。)ああ、砂砂砂。汗もかけなくなってるのに、体についた砂がとれないままなのはなんで?


「はぁっ……はぁっ」


 村はまだ見えない。


「雨くらい、降ってよ」


 何回もそう思った。でも風すらも吹かない。なんだかわざと、わざと誰かが私達を苦しめようと()()()()()を決めてるみたい。


「くそっ……負けるもんか」


 ここまで五回、いや、何回だっけ。何回か転んだ。でももう転んだらダメ。起き上がるときにすごく力を使うから。


「はぁっ……ん……」

 

 苦しくても、できるだけ息はしないように。喉が焼けて、余計に痛くなる。


「ふ……ふ」


 足も止めたらダメ。どれだけ疲れても、震えても、少しでもいいから、進んでいく。止まると、終わる。


「うぎっ」


 ()()()()()()()のは私のお腹の下の方、あと肩から出た血が固まってるから。パリパリ、ピリピリ。ひび割れる痛みが、私を刺す。そっか、()()()()()()()()()()()()()から血が出てるのか。


「ぜっ……ぜっ」


 止まったらダメだよ私、止まったらナターシャさんが死ぬ。


「ナターシャさん、がんばろうね」

「…………」

「ナターシャ……さん?」


 ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ、今()()()()()私は本当に止まっちゃうかも!


「はぁ、はぁ、はぁ」


 前へ。前へ。あれ、私ちゃんと真っすぐ歩けてるかな。前へ前へ。もし間違えてたらどうしよう。間違えてたらたどり着かずに、死ぬ。前へ前へ。


「死ぬまで……歩いてやる」


 死んだら死んだってことに気がつくのかな。


「消えろ!」


 ああ、思わず叫んじゃった。もう体力ないのに……でも、仕方ないよね、ラドルゴさんたちを殺した金属の怪物が見えたんだから。(私はもう何度もそれをみている。でもそれは()()()()()()()で実在しないものだ。)


「うぎぎ……」


 ズル、ズルって引きずってゴメンねナターシャさん。私背が低いからさ。


「あれ……ほんと?」

 

 村が、見える。多分。あれ? これも見えてるだけ? それとも今度こそ本物かな……。(村も何回も見た。でもどれも幻覚だった。ああ、幻覚って助かった後も見え続けるのかな? それとも今だけなのかな?)


「どっちでもいっか」


 うん、あれが本物ならゴールだし、そうじゃなきゃ進むだけ。


「おい! 子どもだぞ! みんな早く来い!」


 うひひ、なんか聞こえるよ…………。なんかみんな走ってくる……。うひ、なんとか……なったんだ。なんか幻覚のほうが本物っぽく感じるね。だからわかったよ、この人たちが本物だって。


「ナターシャじゃねぇか! 君は……とにかく水だ! 水をもってこい!」


 うひ、私がんばった。

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