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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
134/301

125:夜の気配

 死ぬかもしれないと、私は思った。私ではなく、ナターシャさんが。


「自然は偉大ですね。何度も戦ってきた私が、暑いだけで死にそうです」

「そうだね……」


 笑顔で話すナターシャさんの目は……きっとなにも見ていない。


「もう夜ですか……」

「うん」


 真上の太陽が私達を焼く。でもナターシャさんは、すごく涼しそうな顔をしている。


「ああ、そうだ。コヨーテの村に寄っていきましょう。会いたいですよね?」

「うん、泉もあるからお水いっぱい飲めるよ」

「水……水……かは、はひ、水、水っ水うぅううううううううう! 水をっくださかはっ!はっ」

「ナターシャさん! ごめんね、ごめんね、お水は……」


 涙も出ない。唾液も出ない。なんだったら飲ませてあげれるの? 今の私にできることは、ナターシャさんと太陽の間に立って日陰を作ることくらいだ。


「……あ、あれ?」


 あれ、視界が白黒に……そっか私もだいぶ……ヤバイのか。


「かっ! げっ! げっ!」


 ああ、このなにも出ない嘔吐をするのは何回目だろう。苦しい、立ってられないや……。あ、地面の近くで息を吸い込んだせいでまた砂が口に入ったよ。サザリサリ……サリサザリ。もう口の中の砂が濡れることもない。


「あ……」


 しまった、つい仰向けに倒れちゃった。眩しいなぁ……。目を閉じても眩しいなぁ……。私なんて、目一個しかないのに、二つあるナターシャさんはもっと眩しいんだろうなぁ。


「……はっ……はっ」

「はっ……はっ……」


 私の呼吸と、ナターシャさんの呼吸が少しずれてる。起き上がらないと、頑張って私。


「んぎぎ……」


 よし、立てた。ナターシャさんを連れてかないと……。


「うそ……持ち上げれない……」


 力が出ない。私、Sリーグ選手なのに?


「ぐぎ、今っ……強くなくていつ――!」


 なんとか、なんとかあがった。ああ、体温がおかしいね……触れた背中が燃えてるみたいだ。


「ナターシャさん……行こう」

「ソドム……さん……私は……置いていって……」

「どっち行けばいいか教えて! 私全然わかんないの!」


 ナターシャさんは小さな声で「そのまままっすぐ」と言った。うん、まだいけるよね。まだ生きていられるよね。


「はぁ、はぁ」


 歩く。とにかく歩く。私は生きる、生き残るんだ。

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