124:灼熱
それから私達は二人で、二つ目の村を目指した。みんなで歩いていたときはすごく歩きやすかったんだってことに気がついたけど、そんなこと、なんの意味もない。あれから何日たっただろう。ラドルゴさんのおかげで避けれていた嵐の直撃を、何回受けただろう。
「水、最後になっちゃいましたね」
「はんぶんこしようよ」
乾いた嵐が続いて、太陽に照らされ続けて私達は水をなによりも大切だと感じるようになっていた。ああ、熱い。私の金属の両腕と右足のつながってるところが特に。最初は汗ばんでつらかった眼帯の下が今一番ヒリヒリしなくて――。
「ダメです。ソドムさんが飲んでください」
ナターシャさんの顔色は悪い。
「ダメだよ、私ナターシャさんより強いんだから」
「でも……………………!」
私達は振り向く。嫌な気配がして。
「ゾンビの行列……」
「そのようですね。まぁこれだけ離れてれば、危害を加えられることはないでしょう――――え、ソドムさん?」
「ちょっと待ってて!」
私は見つけた。ずらずらと並んで歩くゾンビの一人が水筒をぶらさげているのを。
「はぁっ、はぁっ」
すぐ息が上がる。私もだいぶ疲れてる……。ゾンビに近づいたら襲ってくるかな……うわ、やっぱり来た!
「あ……」
あまりにも簡単に壊せるゾンビ。そっか、私って凄く強いんだ。よし、水筒をもったゾンビは……。
「それは……やめて……」
「え」
水筒に手をかけた時、ゾンビが喋った。
「ゾンビ……じゃないの?」
「私は…………」
その後はなにも言わず、じっと私を見ている。
「ゾンビじゃないの?」
もう一度聞く。
「私は……あが!」
周りのゾンビが、その人に噛みついて……う、みんな集まってきた。
「ご、ごめんなさい」
何人ものゾンビに乗りかかられて、見えなくなったその人。紐を通して水筒に伝わる、人が食べられている感触。
「う…………あああああああああああああああああ!」
ナターシャさんに水を持っていかなきゃ。だから私は思いっきり引っ張った。
「はぁっ、はぁっ」
頬にあたった肉は、さっきの人のだろうか。ついでに千切れた、ゾンビのものだろうか。
「う…………」
酷い臭い……。早くナターシャさんのところに戻ろう。
「ソドム……さん。それ」
「ナターシャさん、これ中身あるよ!」
水筒の蓋を開けてすぐにわかった。この中に入っている液体は、腐っている。




