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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
132/301

123:砂塵に哭く者

 それは突然だった。ナターシャさんが私の頭を押さえつけて「伏せてください」と言う。それから銃声。たくさんの銃声。たくさん、撃つ音がした。


「ソドムさん、逃げましょう」

「え……」

「みんなが抑えている間に早く!」


 私は一度だけ振り向いてそれを見た。大きな車? 違う、腕? 脚? なんかたくさんついた金属の――――怪物。


「そんなヤバイやつなら助けないと!」

「ダメです! あれはあなたでも落とせません! みんなもすぐ合流しますから!」


 その時聞いたことない音がして、後ろが明るくなった。


「ナターシャさん!」

「聞き分けてください! あなたが死んだら私達の希望は――――」


 金属がこすれる音が、すごい速さで――――。(それはまるで泣き声みたいで。)



 

 私達は走った。今までこんなに走ったことなんてないってくらい。


「はぁ、はぁ……もう、大丈夫ですね……」

「はぁ、はぁ……ナターシャさんっ……あれは?」


 ナターシャさんは走りながら武器を捨てた。それはきっと私と同じ速度で走るため。


戦死者を選ぶもの(ワルキューレ)です。まさかあんなものに出会ってしまうなんて」

「…………」

 

 人間が作った工業製品の可能性があるから、その名前を口に出したらいけない。一瞬そう思ったけど……そっか、私は――――Sリーグ選手だし、ナターシャさんは特異通過者だから大丈夫なんだ……なんてどうでもいいことを、今考えている場合じゃないのはわかる。(じゃあなぜ考えてしまったのか述べよ。)


「ごめんなさい……少しだけ泣かせてください」


 私は理解した。多分、みんな死んだ。


「ナターシャさん、おいで」


 年下の私がそんなことを言うのはおかしいかもしれないけど、私は今この人を抱きしめてあげないといけない気がした。


「無理しないでナターシャさん、私達しかいないんだから」

「ああああ! どうして! どうして私達がこんな目に! ゴモラシティを奪われ、ほぼ会うことはないだろうと言われている()()()()に出会うなんて! 私達がなにをしたというのですか! 私達はなぜこんな目にあわないといけないのですか!」


 本当に私達が、なにをしたんだろう。ただ生まれてきて、ただ生きていた、それだけのはずなのに。

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