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122:さよなら
私達の出発は朝早く、コヨーテは来なかった。(まだ寝てるのかな。)
「どうしました?」
「なんでもない。行こうナターシャ」
きっとそのほうがいい。だって私はこれから、殺して、死んじゃうから。
「そうですか。じゃあいきましょう」
布を深くかぶるのは、風があって砂が当たるから。
「…………」
みんな無言なのは、口に砂が入るから。
「…………」
ゴウゴウなる風の音。砂色の私達はその中に溶け込む。そこで気持ちが落ち着くのは、私が私を好きじゃないから。
「…………」
「…………」
「…………」
耳障りな音の中で、声が聞こえた。だから私は振り返った。
「ソドム! また来いよ! また、湧き水さわろう!」
この日の砂の味を、私は忘れない。




