117:トントントントン
砂漠の中で出会ったそれを見て、私は思わずドクターと口走る。(ちょっと距離があるから正確には出会ったではない。)
「あれはドクターが作ったものではないですよ?」
「あ、違うの! ゴモラ69にいた時に出た試合であんなかんじのロボットがドクターって呼ばれてたから――」
「そうなんですか。確かにあれはロボットですね。インプットされた目的を忠実に行うための」
全身金属のロボット。砂漠の中で一人ぼっち。君はなにをしているの? こっちに危害を加える様子はないのだけど……。(というか私達に気がついていない?)
「ほら見てください。ずっと地面を見て移動してますよね」
「うん……」
「あれは多分地雷を探すプログラムを入れたものなのだと思います。ここらへんに地雷はないのですが…………きっと、随分前に放棄されたものなのでしょうね」
「そっか」
真剣に地面を見つめ、少しづつ歩いていく。そして時々、しゃがんで地面を丁寧に、とても丁寧に掘りじっと見つめてまた立ち上がる。そして、また、歩く。
「もうプログラムが破損しているのでしょう。あそこまで活動が単純化してしまったら、停止も近いと思います」
「なんか可哀想……」
「ソドムさんは優しいんですね」
空にはすでに白い月が二つ。今日は何個、夜に月がある日なのかな。
――――――太陽がぎりぎりになってから沈むまでは早かった。
「ソドムさんはゆっくり寝てください」
「私も見張りやるよ?」
「あなたは切り札です。できるだけ体力を温存してください。それに、子どもは夜寝るべきですよ」
そ、そういうものかな。確かに私以外みんな大人だけど……一番強いのは私だよ?
「外では、寝れないですか?」
「……おねしょしたらどうしようかなって……」
どうせ死ぬつもりなのに、なんでこんなこと気になるんだろう。
「ふふ、大丈夫ですよ。私もあなたと一緒に寝ますから」
「え、寝たら意味なくない?」
「いいえ、弟や妹たちとさんざん寝てきましたから、なんとなくわかるんです。しちゃう前に起こしてあげますよ」
超能力!
「星、綺麗だね」
「そうですね。今日は嵐もなさそうですし、ゆっくり寝ましょう」
月がさっさと全部沈んでしまったおかげで、本当によく見える。博士が喜んで撮影してそうだなぁ。
「どうしました?」
「星があんまりにも綺麗で涙出ちゃった」
ナターシャさんにギュッと抱きつくと、ちょっと汗臭かった。でもなんかそれで安心して、私はすぐに――――――は眠れない。心臓がトントンうるさい。嘘、うるさいってほどじゃないけど、なんかトントントントン動いてるのが気になる。なんだろ、寝ないとって思うと、なんか……なんだろ。苦しいってわけじゃないけど……なんだろ。
「あんたがたどこさ、ひごさ……」
「その歌って……」
「古い歌なんでよく意味はわからないんですけどね、なんか可愛いから子守唄にちょうどよいと思って子どもたちによく歌ってたんです。最後のちょいとかーぶーせってところがほんとに可愛いんですよ」
「うん可愛いね。私、初めて聞い……あれ?」
初めて聞いた歌じゃない。私これ、知ってる。あれ? どこで聞いたんだっけ?
「さて、寝ますよ。私達が休まないと、見張りをしてもらってる意味がなくなっちゃいますから」
「うん、そうだね」
「あんたがたどこさ、ひごさ……」
その歌を聞いているうちに私は、だんだんと眠くなり……。気がついたら眩しい朝だった。




