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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
125/301

116:その思いは便利で

 出発の日。私は()()()()()()()()()()()()()になった。でもそれは隠し通せた。どうせ死ぬつもりだって思ったら……呼吸が整ったから。(死にたいという思いは気持ちを整えるのに便利だと、私は気がつく。)


「歩きで行くんだね」

「そうですね。車は見つかってしまう可能性が高いので」


 みんなおそろいの、砂の色の布を体に巻きつけている。もちろん私も。


「見送りはないの?」

「ええ、私達は帰るために戦うわけですから。なんていうか、願掛けみたいなものです」


 ナターシャさんから、()()()()()()()()()()()してもらった武器を受け取る。()()()()とかいう当てやすい銃が二つ、ナイフが大きさ違いで三つ、小さな投げる用の爆弾が何個か。


「あ、あとこれどうぞ」

「ブーツ?」

「ええ。ドクターがあなたのサイズに合わせて作りました。つま先に分厚い金属が入っています。ある程度のものならこれで」


 ドクターはこの戦いにはついてはこない。戦うのがあまり得意ではないから。


「うひひ」

「どうしたんですか、ソドムさん」

「なんかこのブーツ、お守りみたいだなって」


 私がこの街に戻ってこなかったら、ドクターはどう思うだろう。あ、そうだ、()()にナターシャさんに伝言を頼もう。「ドクターのブーツで旅に出ます。ありがとう」って。それから本当に旅に出て、振り返って誰もいなくなった時に死ねばいい。(悲しませたくなければ、死んだって思われなければいい。そしたら私はドクターたちの中で()()()だ。)


「この砂漠を歩いていくんだね」

「はい。途中協力関係にある二つの村を経由します。補給をお願いしてありますので」


 砂しかない、視界。アスファルトがこんなところにあるのは、()()()()()()()()()()()では許されない存在だからだろうか。


「さて、行こう。体力を温存するために無駄な会話は控えなければいかん。最初の村は遠い」

「あらお父さん。あまり会話のない旅は心が疲れてしまいますよ」


 苦笑いするラドルゴさん。もしかすると、この人もこの戦いで死んでしまうかもしれない。(リドルゴさんに似ているから、余計にそう思ってしまう。)


「さて、行きましょう」

「まったく、俺の娘は仕切りたがりだな」

「お父さん!」


 笑うのはみんな。私も一緒に笑えるのは、心が落ち着いているふりが上手になった証拠かな。全員で十二人、みんな戦い慣れてそうな感じで、ちょっと安心してるのもあるかもだけど。


「さて、出発だ! 灰被り(シンデレラ)初の大仕事、作戦名、砂に潜れだ」

「もう、結局お父さんが仕切る!」


 砂に潜れ。そのまま私も砂になって砂漠と混ざってしまえばいいのに。

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