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ソドム・パラノイア  作者: Y
I HAtE Love
121/301

112:舌打ち

 チッ、と音とともに「ガキが」という声と「部外者が口だすんじゃねぇ」って声が聞こえた。うん、まぁ気持ちは……なんとなくわかる。けどさ……。


「そんなこと言うなら、なんで私をここに呼んだの? 助けてもらうだけ助けてもらって、ちょっと意見言ったら舌打ち? ふざけないでよ!」


 って話だよね。さすがに私も怒るよ。


「俺は反対だったんだ! こんなやつ仲間にするなんて! ただの危ねぇガキじゃねぇか!」


 うう、名前も知らないおじさん……悔しいけどそれ正解だと思う……。確かに……よく私みたいなのを仲間にしたよね。


()()()から声がかかった途端調子づくんじゃねぇ! この子が来てくれなかったら俺たちはリューリーに殺されてただろうが!」


 名前もしらない()()()()()()()の言うことも正解だなぁ……。私が来なきゃリューリーに手も足も出なかったわけだもんね。


「それがどうした! どうせ俺たちは弱いんだ! 平和に生きるためならでかいとこに入るのが一番だろうが! こんな砂だらけのとこで暮らすよりよ!」

「ゴモラ645に残してきたやつらはどうするんだ!」

「知るか! 行きたきゃてめぇだけで行け!」


 う、あ、ごめんなさい。ごめんなさい。私が余計なこと言ったせいで……うう……やっぱり私って……みんなの邪魔するだけなんだね。


「おい、ソドム……どうした?」

「うう……うううう……ごめんなさい……ごめんなさい」


 怖い、怖いよ声が、みんな大きい声出さないで、私が、私が余計なこと言ったのが悪いんだから……私だけに怒って、お願いしますお願いします。みんなで喧嘩しないで……。


「ソドム、外に出よう」

「ドクター! 勝手に連れ出すな! そもそもおまえがそのガキを優遇して俺たちの組織の名前まで変えやがるからこじれてんだろうが! なにが灰被り(シンデレラ)だ! 御伽話じゃねぇんだぞ!」

「ひっ!」


 あ、あれ、あれ? なんかおしりの下が熱……あれ、えっ……え、な、なんで? なんで私漏らしちゃってるの? なんで? 私の体、壊れちゃったの? あんな人が怒鳴ってても怖くないはずでしょ? 私のほうが強いのにっ……止まって……止まってよ……。やだよ、こんなところで……。やだよ……。


「いい加減にしてください! 自分たちで決めれないからってソドムさんを責めて、恥ずかしくないんですか!」

「お、おいナターシャ……それをしまえ……」

「9600式レールガンカスタム、私の腕がどれほどかわかっていますよね!」

「落ち着けナターシャ……わかったから……わかったから」


 ナターシャさん……?


「すいませんソドムさん。皆……怖いんです、生きていくことが。はい! ボーッとしていないで謝罪!」

「す、すまねぇつい熱くなって」

「感謝も忘れて……悪かったな……」

「ちゃんと謝りなさい! みなさん大人でしょう!」

「す、すいませんでした!」


 うう、漏らす前に言ってほしかった。今立ち上がったらバレちゃう。


「さて、みなさんとりあえず外に出てください。ドクターとソドムさん以外、はやくはやく! ソドムさんを落ち着けてあげるのが今一番大事なんですから! 会議は終わりです。ほら、早く!」


 え……。


「すいませんソドムさん。私が、着替えをとってきますから……みんな大きな声を出して怖かったですよね?」


 ナターシャさん……。(不思議とナターシャさんの声は、怖くなかった。あの小さな舌打ちは、あんなに大きく聞こえたのに。)

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