110:スーサイド・プラン
作戦は大幅に変更になった。灰被りのメンバーの中から精鋭を集めゴモラ645に潜入、できるだけ戦力を残したまま、狂姫さん……いや、狂姫のところに私を届ける。そしてそれから他の人達が645でいろいろ行動して……。
「ソドムさん、冷静ですね……」
「うん、なんかそんな気分」
「偉いぞ」
「ありがとう」
大量の銃とか、ナイフとか。それをずらりと並ぶ街の人たちに渡すのは、ナターシャさんとラドルゴさん。
「これで戦うの?」
「いえ、これは自衛用です。私達がこの街を離れたところを襲われるかもしれないので」
「あ! ソドムだ!」
この前の……子どもたち。そっか、この子たちも銃使えるんだ。
「ナターシャさん、私でも使える武器あるかな……」
「はい。じゃあ、今日の夜私のところへ来てください」
「とっておきのを用意しておくぞ。なぁ、ナターシャ」
「はい、お父さん」
武器がないと……勝てないかもしれない。相手はあの狂姫さんだ。(それに、今の狂姫さんは私が飲まされた、あの強くなれる虫みたいな機械を――。)
家に戻ると、ドクターは私のものではない左腕を見せる。あの綺麗な金色とは違う、灰色に塗られた金属の腕。真ん中くらいにくっつけた痕があるのは……私に合わせてサイズを縮めてくれたのかな?
「元の腕には劣るが、それなりに頑丈な腕だ。これなら取りつけられるがどうする?」
「ありがとう」
一瞬ドクターの顔が、いや、露骨に落ち込んだ顔をする。な、なんだろ……。
「先日つけさせてもらった金色のほうだが。あれは金属が特殊すぎてね、並の部品でつないでもすぐ外れてしまうのだよ。普通の素材じゃすぐ摩耗してしまうからな。まぁ、一応良い部品を使ってつけたのだが……その……」
「完璧ではないってこと?」
「ああ。いつも後出しですまないな……。本当は完璧につけてやりたいが、私にはそれだけの材料を揃える力が……」
「気にしないで、ドクターがいなかったら私は腕なしのままだったから」
ドクターはちょっと悲しそうな顔で微笑むと、手際よく、私に左腕をつけはじめる。ありがとう、ドクター。これで私の戦いに選択肢が増えたよ。
「今夜ナターシャさんとラドルゴさんが私に武器くれるって」
「そうか。あの二人なら使い方もよく教えてくれるだろう」
上手に……使わないとね。腕も。武器も。
それから夕飯を食べて、私はナターシャさんのところへ行く。(ラドルゴさんは会合に出るとかでいなかった。)
「ソドムさん、これがあなたの武器です」
「一つじゃないんだね……」
「はい。ソドムさんは武器初心者ですよね。ならば選択肢を増やし、一つの武器に頼らない戦闘をするべきです。武器は補助だと割り切って」
「そ、そういうものなのかな」
銃が二つ、ナイフが三本、爆弾にあと……なんだろこれ? こんなにたくさんあって混乱しないだろうか? ああ、でも両腕あるっていいな! 両手で持てるもん! ドクター、ほんとにほんとにありがとう!
「武器は使いこなしてこそ……と言いますがそんな時間はありません。ならば邪魔にならない程度に捨てても良い数持っていきましょう」
「とっておきなのに……いいの?」
「はい。あなたに託すべき武器たちです」
ちょっとプレッシャーだな。でも、それだけ信じてもらってるんだ。ありがたく、うん、感謝して受け取らなきゃ!




